今年3月、イタリアへ行く機会がありました。ミラノMUJIでの「佇まい」展参加が目的でしたが、それに先駆け、北イタリア(パダーニャ)を中心に小旅行へ。ピエモンテの染織研究家ご夫妻、クレモナではリネン博物館を主宰するアーティスト、ご案内下さったのはローマ在住の染織作家・・・その後ベルガモへと地方の田園風景を眺めながらの移動の旅、生活を営む人々の暮らしに出会う旅でした。受け継がれてきた自国文化、その地方独特の食文化を豊かに謳歌している姿は印象的でした。
その後のミラノでも、料理上手の知人宅の貸部屋に滞在したこともあり、忙しくとも食事の時間を大切にし、食事に合わせたワイン、尽きない会話とともに楽しむ姿にカルチャーショックの連続でした。
コンビニエンスストアが其所此所にあり、何でも、過剰に便利にシーズンレスに手に入ってしまう日本、そして一般的に流通している食材はいかに管理された工業製品に近いものであるか、頭では分かっていたものの、いつの間にか慣れてしまっている自分に気づきました。食に限らず、何事もパーソナル化し自分のペースを優先している有様も気になります。
スローフード発祥の地であるイタリアから学び、自然なものが「こだわることなく当たり前にある」そんな日本になってほしいと切望します。
私自身、人生の中での限られた食事の機会を無駄にしまい、そう決心しました。そして食事を家族や友と分かち合うことも。
同時にイタリアでは、伝統が強いがために、新しいものを取り入れることにはやや消極的な姿も見受けられたように思います。島国であり、古くから大陸文化の洗礼を受けてきた日本は、他国の文化を自国の文化と混ぜ合わせ独自の文化を創ることに長けています。日本人に人気のイタリア料理もまた例外ではなく、料理にはもちろん器という要素が不可欠で、イタリア料理に触発され、食の在り方を見つめ直すとともに、いまの日本の作り手の器でイタリア料理を頂きたい、という願望を満たした展覧会をと、今回の企画に至りました。器、料理、と来れば料理を生み出す道具も、と(つい道具好きなものですから)、日本で生まれた素晴らしい道具類も並びます。
そして、今展のきっかけともなったイタリア在住で誠実な生産者の方達の食材を日本に紹介されているCASA MORIMI(カーサ・モリミ)さんの食材をご紹介するとともに、食材を使ってのお二人の料理家の会を開催いたします。
安藤明子
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