百草冬百種展
「木村朗子写真展」
2025.2.1 sat–2.16 sun
11:00–18:00
休廊日 2.4 tue, 12 wed
木村朗子 在廊日 2.1 sat, 2 sun, 15 sat, 16 sun
写真展示室(土間・一階口の間・二階白部屋)
素になること
木村朗子の写真を初めて見たのは、国際的に活躍する美術写真家・山本昌男の自宅を訪ねた時だった。玄関先に飾ってあった抽象画のような写真に目をひかれ、何を撮ったものだろうと思案し、「山本さん、この写真、上下逆さまじゃないの?」と尋ねた。「それは見る人の自由で、写真家にとってもそれほど重要ではないのよ。そもそも彼女は写真を撮る瞬間、目をつむっているしね」という答えが返ってきた。僕のそれまでの写真の定義はフランスの写真家アンリ・カルチェ・ブレッソンの代名詞「決定的瞬間」のように、写真家の瞬間を捉える鷹のような鋭い目が重要だと思っていたのでひっくり返りそうになった。
目をつむって撮るってどういうことなのだろうという疑問を、木村さんに会う機会があり問うてみた。予想していた答えは返ってこず、どうも違う星の人のようで僕の頭は更に混乱した。『作品は鑑賞者が「観る」たびに、新しく⽣まれ変わりながら存在し続けている』という彼女のステイトメントにもあるように、作品は鑑賞するものではなく、媒介として存在するもの。写真論や芸術論などに囚われていては、作品は生まれ変わってくれないのだ。巫女さんのような人と出会ってしまったと運命を感じた。
朗子さんのもう一つの仕事である整体の施術に、患者と離れていても念じることで施術をしたように身体が整うという遠隔施術があるそうだ。彼女の写真作品を観ることで、心も身体も解放された感じがするのは思い過ごしではなく、想いを送る遠隔施術があったからだろう。彼女が特別な力を持っているというわけではなく、潜在的には実は誰もが持っているもの。透明で純度が高くなれば、作品に宿るものが癒しの力を持ち、見るものに跳ね返ってくる。
情報過多で現代ほど自分を見失いやすい時代はない。様々なものを積み重ねることが大事だと信じてやって来た僕にとって、作品の前で透明になったり素になることは最も難しい。木村朗子の写真を観る度に僕は素になっていないことに気付く。21世紀のアートの一つに出会えた事を喜びつつ、理屈など要らないと反省するのだった。
百草 安藤雅信
光
地球は悲鳴を上げ、争いが絶えず、信頼できるものも分からなくなってしまう現代。
木村朗子さんの写真に表現されているものは、そんな現代とは対極にある、太古から変わらぬもの。被写体である自然物は具象であるが、抽象化し、どれも〈光〉といっても良いかもしれない。拠り所になる、信頼できるものであり、それは観る人自身である、ということになるのだろう。
是非、足を運んで頂き、朗子さんの写真作品にゆっくり対面していただけたらと思う。そして生活の一部に置かれ、お護りのように〈蓋を開け〉自信や勇気をもらう、そんな存在となれば嬉しい。
朗子さんの「目を瞑って撮る」件だが、その瞬間を「差し出されている」感覚なのだという。だから迷いなくシャッターを押せるらしい。
安藤明子
木村朗子 / Akiko KIMURA
1971年 茨城県日立市に生まれる。
小学3年生のときに父親の一眼レフカメラを使い撮影を始める。
立教大学社会学部を卒業後に写真作品の制作を開始し、国内外で発表。
2023年制作開始から20年経過した『 i 』シリーズをまとめた作品集が
スペインRMから発行される。
横浜市在住。
Website: akikokimura.jp
Instagram: akikokimuraphoto
Statement
作品を「観る」ごとに、発⾒があります。
それは作品を鏡のようにして、
何度も⾃分⾃⾝と出会いなおしているということなのかなと思います。
そして作品は、鑑賞者が「観る」たびに、新しく⽣まれ変わりながら
存在し続けているのではないか? そう思っています
出展内容
- 額装写真作品14点
- 作品集『i』
- 作品集『月雪花』
- 小作品
木村朗子展 ギャラリーツアー
2.2(日)13時より 木村朗子写真展示室にて
〈山本昌男(現代美術家)、中島玲子(アートプロデューサー)、安藤雅信+木村朗子〉
木村朗子さんの作品を巡りながら、それぞれが感想や解説を座談会的に語ります
※参加希望の方は開始時間にお集まりください
※百草のinstagramにてライブ配信予定です
ももぐさカフェ
ももぐさカフェは2025年1月末にて22年の幕を閉じ、5月、新たな展開へと移行します。
長い年月、ご愛顧にあずかりましたこと、心より御礼申し上げます。
また22年間、企画展毎のメニューやイベントなど、作家や飲食関係の皆さま、歴代のカフェスタッフの皆さまには大変お世話になりました。
今後、大きな窓のある客席スペースは、多治見市住吉町で「Teryori Oya」を営んでいらした大矢夫妻にバトンをお渡しし、準備期間を経て5月にオープンを予定しております。
大矢夫妻による、季節の食材を活かした美味しいお料理と憩いのカフェタイムを、楽しんでいただけますように。企画展と連動したランチも計画してくださっています。
オープンに先駆けて、2月1日(土)からももぐさカフェスペースにて「Oya」がプレオープンいたします。軽食&カフェをお楽しみください。
開店日時などの詳細は、ホームページ・SNSにてお知らせいたします。
@teryori_oya
5月以降、カフェカウンターのある部屋も、イベントスペースなどさまざまな場としての活用を予定しております。お楽しみに。