DM / pdf

Peter Ivy

ピーター・アイビー

2024.9.21 sat—10.6 sun
11:00–18:00

休廊日 9.24 tue, 10.2 wed
作家在廊日 9.21 sat, 22 sun (–14:00)

出品内容

Pendant Light(予約販売)
茶櫃(予約販売)
Jar, Plate, Yakumi Set, Pitcher
その他

文化のハイブリッド

古物のローマングラスや江戸硝子など、軽くて持ち上げていることを忘れてしまいそうな薄手のガラス器を集めていたことがある。形の美しさと皮膚のような儚さ。特に江戸硝子は徐冷が十分ではなかったからか、木箱から出した途端、温度差で割れることもあるとも聞いた。「ガラス器を触ったら割れました」とスタッフからの報告を聞いて、泣きたくなったことも何度か。それで茶会などの非日常の時だけ自分で箱から取り出し、使用するようになった。
薄手でも日常使いできる物はないかと探していた時、近世阿蘭陀のガラスリム皿を手に入れた。テーブルに並べると自作のリム皿と相性も良かったので、写しを作ってくれる作家を探した。百草を開廊した20世紀終わり頃、当時薄手の制作をこなせる作り手はなかなか見つからなかったが、当時隣の瀬戸市に住んでいたピーター・アイビーが承諾してくれた。
その頃から電球を制作したり、風船のような大きなガラス玉の中にワイヤーを張った作品など、独自の視点と工夫、技術が相俟って高レベルのものを作っていたが、それをひけらかすことなくミニマムに仕上げる感覚には目を見張るものがあった。彼ならエッセンスも汲み取って作ってくれるだろうと期待し、予想通り完成したものはシンプルでありながら味わいもあり、まるで古物のようで早速使いたくなった。百草オリジナルとしてその後も暫く制作してくれた、彼にしかできない世界観での美しい幻のリム皿であった。
百草の初個展をお願いしたのは10年前、その頃は富山県に住み、スタッフと共に制作していた。その後も工房体制も充実させ、容器類など幅をどんどん広げている。ワイヤーで密封させる保存容器の工夫などは、ピーターならではの実験精神を実用品に結び付けた独創的な傑作だろう。その応用から展開させたペンダントライトは、百草のたたきの土間に吊るしているが、専用の電球のスペアも用意され生活道具としての配慮が行き届いている。  
2回目となる今展で注目したのは、ステンドグラスの技法を利用して、吹きで作ったガラス板を使用した新作の木製茶櫃(重箱) 。西洋の技法と日本の習慣のハイブリッド。心が躍り、早速僕の茶器を組み込み、いつでもすぐ茶淹れできるセットに仕上げてみた。また、もう一つ注目したのは、ピーターがここ数年自宅に住みながら改修し、パーツまで特注して作り上げた照明器具。本当に必要な光の明るさはどのくらいだろうと調整し、制作した新作の Pendant Lightである。表面の加工はハーフミラーのミラーリング加工と温かみのあるホワイトカラー二種。コードの接続金具も日本製のオリジナルで仕上げている。今回の新作の茶櫃や照明は、出身の西洋文化の文脈を活かしながら、日本の文化をさりげなくハイブリッドしている。展示も本人の工夫を活かしてくれるだろう。色々な意味で久々のピーター・アイビー展をとても楽しみにしている。

ギャルリ百草 安藤雅信

Peter Ivy

1969 アラバマ州で、音楽家夫婦の元に生まれる
1976 ピアノ、バイオリン、ベース、ユーフォニアム、聖歌隊で歌など習ったがどれも練習が嫌いですぐにやめる 
1982 野球を始めたが、飛んできたボールを取ろうとして頭にぶつかり野球はやめる 
父とロッキー山脈へ2週間登山に行く 父は、どんどん先に進んでいき山の中 
たびたび一人きりになった 空腹な上、靴下まで濡れた状態、重い荷物で不満ばかり口にした 
そこへ父が振り返り、最高の笑顔を見せ「雪の日であろうと、雨の日であろうと....」アメリカ郵便局の
信念の言葉を口にした 瞬間、100%の不幸から100%幸せな気持ちに大きな心の変化が起こる
1983 義母の車のタイヤ2つがパンクし、車の取扱説明書を読んでパンクを直し、取扱説明書を読んで自力で家まで運転して帰る
1986 国語で父との登山のことを作文に書き、先生がみんなの前で涙ながらに読んでくれたとき、
何かに真剣に取り組めば、自分の心を表現できるんだとわかる
1988 何を勉強したいか分からなかったので大学進学は親に断り、一人暮らしを始める 大工さんやBMWの車の修理工場で働く
1989 75年式BMWのバイクを購入(今でも所持)
1ヶ月後には、3000km離れたロードアイランド州まで行き住み始める
1990 RISD(ロードアイランドスクールオブデザイン)入学 
自分の手を使うこと、人と一緒になって作り上げて行くこと、いつも何か発展させていくことができる、という3つことを大事にする
1992 デザインのコースより、ガラスを選択する 200年前に建てられた古くて薄汚い工場に住み始める 
しかし、そんな状況でも日常の生活の中にこの上ない美しさを毎日感じられる とても素晴らしい場所でした
1995 シアトルでガラス作家のアシスタントになる この経験が私の基盤となる
1997 自分の作品を作りたいと思い、ロードアイランド州に戻る 窓の光から世界が回っていることが感じられた
2000 ミュージアムプロジェクトで大きなガラスの花制作のため来日 
2001 ヘイスタックマウンテンクラフトスクールにて教える 壊れたガラスを修復することを始める 
失敗の繰り返しで、昔先生が言った「doing is thinking」の意味が分かる
2002 想像したことのない経験をしてみたいと思い、日本へ 
日本人の方が、私の作品をより理解してくれることがあるが逆のこともある 
愛知の大学で教えていて日本語があまりできなかったので、数年の間は、とてもシンプルな作品を作っていた
2004 使うことに意識を向けるようになる そして、自分が使いたいと思うものを発表するようになる
2007 教えることを辞め、小さくてシンプルな工房を建てる
2013 スタイリストの高橋みどりさんと始めた工房コレクション“KOBO”を発表
デザインするにあたり、みどりさんの使いたい器案をもとにサンプルを作り、それを実際にみどりさんに使ってもらう 
そしてまたその感想をもとにサンプルを作るという作業の繰り返しを行った 
時間のかかる地道な作業となったが、私にとって器をよく知る彼女と仕事をすることはとてもいい経験になった
このKOBOラインを通じて私の工房で働くみんなに安定した技術的な基礎と、
私が人生の中で集めた吹きガラスの知識を伝えていきたい
それが私の目標でもあります
2017 自宅の天井をはぐると大きな牛梁が出てきたので自分たちの手で家の解体を始める
2019 照明も無く夜は真っ暗で、お風呂は蝋燭を灯して入浴。
2階の廊下に手すりはまだないが、屋根と壁はできたので住み始める
2024 庭と玄関がやっと出来上がり、富山で初めてのOpen Studioを開催する

Photo: 伊藤徹也

Peter Ivy

ピーター・アイビー

2024.9.21 sat—10.6 sun
11:00–18:00

休廊日 9.24 tue, 10.2 wed
作家在廊日 9.21 sat, 22 sun (–14:00)

出品内容

Pendant Light(予約販売)
茶櫃(予約販売)
Jar, Plate, Yakumi Set, Pitcher
その他

文化のハイブリッド

古物のローマングラスや江戸硝子など、軽くて持ち上げていることを忘れてしまいそうな薄手のガラス器を集めていたことがある。形の美しさと皮膚のような儚さ。特に江戸硝子は徐冷が十分ではなかったからか、木箱から出した途端、温度差で割れることもあるとも聞いた。「ガラス器を触ったら割れました」とスタッフからの報告を聞いて、泣きたくなったことも何度か。それで茶会などの非日常の時だけ自分で箱から取り出し、使用するようになった。
薄手でも日常使いできる物はないかと探していた時、近世阿蘭陀のガラスリム皿を手に入れた。テーブルに並べると自作のリム皿と相性も良かったので、写しを作ってくれる作家を探した。百草を開廊した20世紀終わり頃、当時薄手の制作をこなせる作り手はなかなか見つからなかったが、当時隣の瀬戸市に住んでいたピーター・アイビーが承諾してくれた。
その頃から電球を制作したり、風船のような大きなガラス玉の中にワイヤーを張った作品など、独自の視点と工夫、技術が相俟って高レベルのものを作っていたが、それをひけらかすことなくミニマムに仕上げる感覚には目を見張るものがあった。彼ならエッセンスも汲み取って作ってくれるだろうと期待し、予想通り完成したものはシンプルでありながら味わいもあり、まるで古物のようで早速使いたくなった。百草オリジナルとしてその後も暫く制作してくれた、彼にしかできない世界観での美しい幻のリム皿であった。
百草の初個展をお願いしたのは10年前、その頃は富山県に住み、スタッフと共に制作していた。その後も工房体制も充実させ、容器類など幅をどんどん広げている。ワイヤーで密封させる保存容器の工夫などは、ピーターならではの実験精神を実用品に結び付けた独創的な傑作だろう。その応用から展開させたペンダントライトは、百草のたたきの土間に吊るしているが、専用の電球のスペアも用意され生活道具としての配慮が行き届いている。  
2回目となる今展で注目したのは、ステンドグラスの技法を利用して、吹きで作ったガラス板を使用した新作の木製茶櫃(重箱) 。西洋の技法と日本の習慣のハイブリッド。心が躍り、早速僕の茶器を組み込み、いつでもすぐ茶淹れできるセットに仕上げてみた。また、もう一つ注目したのは、ピーターがここ数年自宅に住みながら改修し、パーツまで特注して作り上げた照明器具。本当に必要な光の明るさはどのくらいだろうと調整し、制作した新作の Pendant Lightである。表面の加工はハーフミラーのミラーリング加工と温かみのあるホワイトカラー二種。コードの接続金具も日本製のオリジナルで仕上げている。今回の新作の茶櫃や照明は、出身の西洋文化の文脈を活かしながら、日本の文化をさりげなくハイブリッドしている。展示も本人の工夫を活かしてくれるだろう。色々な意味で久々のピーター・アイビー展をとても楽しみにしている。

ギャルリ百草 安藤雅信

Peter Ivy

1969 アラバマ州で、音楽家夫婦の元に生まれる
1976 ピアノ、バイオリン、ベース、ユーフォニアム、聖歌隊で歌など習ったがどれも練習が嫌いですぐにやめる 
1982 野球を始めたが、飛んできたボールを取ろうとして頭にぶつかり野球はやめる 
父とロッキー山脈へ2週間登山に行く 父は、どんどん先に進んでいき山の中 
たびたび一人きりになった 空腹な上、靴下まで濡れた状態、重い荷物で不満ばかり口にした 
そこへ父が振り返り、最高の笑顔を見せ「雪の日であろうと、雨の日であろうと....」アメリカ郵便局の
信念の言葉を口にした 瞬間、100%の不幸から100%幸せな気持ちに大きな心の変化が起こる
1983 義母の車のタイヤ2つがパンクし、車の取扱説明書を読んでパンクを直し、取扱説明書を読んで自力で家まで運転して帰る
1986 国語で父との登山のことを作文に書き、先生がみんなの前で涙ながらに読んでくれたとき、
何かに真剣に取り組めば、自分の心を表現できるんだとわかる
1988 何を勉強したいか分からなかったので大学進学は親に断り、一人暮らしを始める 大工さんやBMWの車の修理工場で働く
1989 75年式BMWのバイクを購入(今でも所持)
1ヶ月後には、3000km離れたロードアイランド州まで行き住み始める
1990 RISD(ロードアイランドスクールオブデザイン)入学 
自分の手を使うこと、人と一緒になって作り上げて行くこと、いつも何か発展させていくことができる、という3つことを大事にする
1992 デザインのコースより、ガラスを選択する 200年前に建てられた古くて薄汚い工場に住み始める 
しかし、そんな状況でも日常の生活の中にこの上ない美しさを毎日感じられる とても素晴らしい場所でした
1995 シアトルでガラス作家のアシスタントになる この経験が私の基盤となる
1997 自分の作品を作りたいと思い、ロードアイランド州に戻る 窓の光から世界が回っていることが感じられた
2000 ミュージアムプロジェクトで大きなガラスの花制作のため来日 
2001 ヘイスタックマウンテンクラフトスクールにて教える 壊れたガラスを修復することを始める 
失敗の繰り返しで、昔先生が言った「doing is thinking」の意味が分かる
2002 想像したことのない経験をしてみたいと思い、日本へ 
日本人の方が、私の作品をより理解してくれることがあるが逆のこともある 
愛知の大学で教えていて日本語があまりできなかったので、数年の間は、とてもシンプルな作品を作っていた
2004 使うことに意識を向けるようになる そして、自分が使いたいと思うものを発表するようになる
2007 教えることを辞め、小さくてシンプルな工房を建てる
2013 スタイリストの高橋みどりさんと始めた工房コレクション“KOBO”を発表
デザインするにあたり、みどりさんの使いたい器案をもとにサンプルを作り、それを実際にみどりさんに使ってもらう 
そしてまたその感想をもとにサンプルを作るという作業の繰り返しを行った 
時間のかかる地道な作業となったが、私にとって器をよく知る彼女と仕事をすることはとてもいい経験になった
このKOBOラインを通じて私の工房で働くみんなに安定した技術的な基礎と、
私が人生の中で集めた吹きガラスの知識を伝えていきたい
それが私の目標でもあります
2017 自宅の天井をはぐると大きな牛梁が出てきたので自分たちの手で家の解体を始める
2019 照明も無く夜は真っ暗で、お風呂は蝋燭を灯して入浴。
2階の廊下に手すりはまだないが、屋根と壁はできたので住み始める
2024 庭と玄関がやっと出来上がり、富山で初めてのOpen Studioを開催する

Photo: 伊藤徹也

〒507-0013 岐阜県多治見市東栄町2-8-16
多治見ICより車で10分
JR多治見駅より東鉄バス13分「高田口」下車1km
tel. & fax. 0572 21 3368
google maps

ももぐさカフェ
ももぐさカフェは常設メニューの軽食とお飲物のご用意です。
12:00–18:00 (L.O 17:30) メニュー・席の予約不可

スケジュール
10.7 mon–10.9 wed 展示替えのため休廊
10.10 thu–10.14 mon 常設展(14 monは16時閉廊)
10.15 tue–10.17 thu 展示替えのため休廊
10.18 fri–11.17 sun* 「土から生える2024」(金土日祝)・常設展(火/水休廊)
*この期間、金土日及び祝日は「art in mino土から生える 2024」の会場となります。月木(祝日を除く)は常設展示室のみご覧頂けます
詳細はWebサイトをご覧ください

「ART in MINO 土から生える2024」とは
やきもののまち 東美濃を舞台にしたアートプロジェクト。2008年の開催から16年、当時の記憶を現在・未来に繋げるべく、今秋開催。やきものや粘土という窯業の枠に縛られることなく、私たち人間の創成の源となる原初の土まで解釈を広げます。
「ギャルリ百草と百草の森」が会場の一つとなります。ギャルリ百草では、安藤正子、安藤雅信、山田亘(「土から生える2008」写真展示)、百草の森では内田鋼一、森北伸の作品展示と、山本亮平による「土窯をつくる」ワークショップを計画しております。
Instagram