10.12 wed, 10.18 tue 休廊 / 伊藤慶二 在廊日: 10.8 sat
*2018年10月に行われました、百草20周年記念企画「伊藤慶二展」展覧会図録を、今回の展覧会に合わせ制作しております。
慶二さんに出会ってから40年近く経ち、作家としてずっと目標とさせて頂いている。食器から立体、平面作品や書など多面的な展開をされている上に、それぞれを独自の技術で深めて仕上げているので、こだわりのない自由さと表現の多様さに付いていくのが精一杯である。近付けば近付くほど距離が縮まるどころか、どんどん離れていく印象だ。87歳の今日でも、個展はほぼ毎回新作。それに新しいことや素材にチャレンジし続けていらっしゃる。
個展の為に作るのではなく、ご自分の中にいくつかのシリーズものが存在しており、それらを新規継続されているのだ。長期ではヒロシマ・ナガサキシリーズ。土偶シリーズに加え、ここ10年くらいは面シリーズ。それに茶盌や壺、仏手シリーズが加わる。更に平面作品も幅を広げ、油絵、オイルパステルなどなど、書き出したらキリがない。どの作品も楽しさが伝わってくるものばかり。制作と生活が完全に一体化し、日常の気付きが制作にいつも反映されている。特に土偶は楽しくてしょうがないと言う。長らく土偶は考古学の対象とされてきたが、「生活から生まれた日本の彫刻のルーツである」と慶二さんは美術の解釈も自在である。
最近の平面作品の充実ぶりには目を見張る。元々、油絵科のご出身ではあったが、和紙にオイルパステルで描いた後、ペインティングナイフで押さえ付けるというオリジナルの技法に発展している。平面と立体の境界線などなく繫がっていて自由に横断し、心がどんどん自在になっている感じ。若い頃からの造形体験が、生き生きと跳ね回っているのだろう。
良い意味で慶二さんの個展は完成された途中経過である。今展もどんな現在進行形が観られるのか楽しみだ。
安藤 雅信
1998年10月、百草の杮落としの展覧会から、慶二さんの作品世界を拝見している。
初めて慶二さんの食器を手にした衝撃は忘れられない。目から鱗が落ち、自分が求めていきたいものと完全に繋がった。
慶二さんの手から生まれるもの、食器と彫刻の区別なくそれは等しく造形物として美しい。
上面、底面という区別がなく、口造りから高台内に至るまで全てが造形物として繋がっており、一客の湯呑みや小鉢も彫刻として存在する。
繰り返されるモチーフでシリーズ化している作品の中で、仏足と結界、地蔵、五輪塔など、祈りの象徴としての造形物があるが、長くどの時代も独自の解釈とユーモアが加わり慶二さん自身の造形物となっている。山田節子さんが慶二さんに厨子「仏堂」(制作: 厨子屋)を依頼されたことも慶二さんの作品から自然な流れであったと思う。
家や仏壇を引き継ぐ時代はもう終わるのかもしれない。
大切な人を想い、魂を鎮め、手を合わせる場所。天上に繋がる装置の様な存在が家の中にあることは、今生を生きる人にとっての拠り所となるのではないかと思う。
今展にも出品がかなった仏堂だけでなく、慶二さんの手から生まれるものは、掌に載るほどの一体の彫刻も、一幅の絵画もそんな存在になり得るに違いない。
安藤 明子
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1935 岐阜県土岐市に生まれる
1958 武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)卒業
1960 岐阜県陶磁器試験場(現・岐阜県セラミック研究所)デザイン室に勤務(〜’82)同試験場にて日根野作三に師事
1963 J.D.C.A.(日本デザインクラフトマン協会、現クラフトデザイン協会)入会(’82同上退会)、第一回朝日陶芸展クラフト部門出品(以後、第4回まで毎回出品)
1967 毎日国際陶芸展前衛部門に出品
1968 J.D.C.A.一般公募のクラフト展審査員を務める
1970 この頃から多治見市意匠研究所にて講師を務める(〜2000)
1975 土岐市泉島田町(現住所)に工房を建て、ガス窯を設置 J.D.C.A.理事となる
1980 土岐市五斗蒔、陶芸村内に薪窯を築窯、I.A.C(国際陶芸アカデミー)入会(2008退会)
1985 石川県立九谷焼技術研究所の非常勤講師となる(〜2014)
1994 滋賀県陶芸の森 招聘講師となる
1998 第5回国際陶磁器フェスティバル美濃‘98の専門委員を委嘱される(〜’05 第7回)、ハワイ大学企画EAST WEST ceramic collaboration招待
2008 第8回国際陶磁器フェスティバル美濃・国際陶磁器コンペティション陶芸部門審査委員長
(セラミックパークMINO/多治見、岐阜)
*受賞歴など
1978 世界クラフト会議・日本クラフトコンペ美術出版社賞
1979 ’79日本クラフト展・優秀賞(松屋銀座)
1981 ファエンツア国際陶芸展「仏足のゆくえ」(イタリア)
1989 岐阜県陶磁資料館(現 岐阜県陶磁美術館)、「王の祈り」美濃陶芸作品永年保存買上
2006 岐阜県芸術文化顕彰
2007 円空大賞展 円空賞
2013 地域文化芸術功労表彰(文科省)
2017 薬師寺 平成の至宝 八十三選奉納
2017 2016年度 日本陶磁協会 金賞
*パブリックコレクション(国内)
東京国立近代美術館工芸館、京都国立近代美術館、岐阜県美術館、岐阜県現代陶芸美術館、北海道立近代美術館、多治見市美濃焼ミュージアム、北海道立近代美術館、滋賀県立陶芸の森(信楽)、パラミタミュージアム(三重)、楽翠亭美術館(富山)、東京オペラシティ アートギャラリー、菊地寛実記念 智美術館(東京)、愛知陶磁美術館、モザイクタイルミュージアム(多治見)、とうしん美濃陶芸美術館
*パブリックコレクション(海外)
エーバソン美術館(アメリカ)、コンテンポラリー・ミュージアム・ホノルル(アメリカ)、ヘッチェンス美術館(ドイツ)、ファエンツァ陶磁器博物館(イタリア)、アリアナ美術館(スイス)、ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館(オーストラリア)、世界陶磁器エキスポ財団(韓国)
*展覧会
1976,1978 青山グリーンギャラリー(東京)
1977「陶画」カサハラ画廊(大阪)
陶額堂(京都)
1980「MINO展」多治見市文化会館 /企画・出展 ※以降88年の第9回まで(多治見、岐阜)
1981「パドヴァ国際現代美術展」(パドヴァ、イタリア)
「CLAYWORK’81」企画・出展 /ギャラリーマロニエ(京都)
1982「現代日本陶芸展」(イタリア)
「日米ART&CRAFT展」(金沢、石川)
「陶画発表」陶額堂(京都)
1983「荒木高子と2人展」Braunstein Gallery(サンフランシスコ)
1984「国際陶芸展−CERAMICS×27」(ブタペスト)
1985「陶芸展−Pacific Connections」(アメリカ)
1987「シリーズ土–華麗なる変身」ギャラリー白(大阪)
1989「うち−in」ギャラリー川船(東京)
1990「沈黙シリーズ」ギャラリー椿(東京)
1991 ギャラリーキャプション(岐阜)
1992 ギャラリーマロニエ(京都)
「陶−空間の磁場」名古屋市民ギャラリー(愛知)
「現代日本の陶芸–継続と変形」エヴァーソン美術館(ニューヨーク)
1993「現代日本の陶芸アメリカコレクション」ジャパンソサエティギャラリー(ニューヨーク)
1995 Hetjens美術館(デュッセルドルフ、ドイツ)ギャラリーBOWING(ハノーヴァー/ドイツ)
美術装飾美術館(ローザンヌ、フランス)を巡回
「ファエンツァ国際陶芸展受賞者展」企画・出展(土岐、岐阜)
1996「I.A.C.’96 日本展」佐賀県美術館(佐賀)
1997「‘97TAEGUアジア美術展」(韓国)
「陶磁の形11人展」ASAMA工芸館(長野)
2000「うつわをみる 暮らしに息づく工芸展」東京国立近代美術館工芸館(東京)
「国際陶芸アカデミー(I.A.C.)展」(ハノーヴァー、ドイツ)
2001「I.A.C.展」(韓国)
「The オブジェ2001」Gallery NOW(富山)
正観堂(京都)
2002 ARTSITES Gallery(ニューヨーク)
「新工芸精神」韓国・中国・日本ワークショップ招待(韓国)
「近代工芸:百年の歴史」東京国立近代美術館工芸館(東京)
「日本陶芸の展開」岐阜県現代陶芸美術館(多治見、岐阜)
2003 「ORIVE 2003 in NY」ジャパンソサエティ(ニューヨーク)
2005 「現代茶の湯の道具展−月は雲間に」GALLERY le bain(東京)
「内田繁と2人展」巷房ギャラリー(東京)
2006 「伊藤慶二 うつわ展」ギャラリー4CATS(名古屋、愛知)ギャラリー数寄(江南、愛知)
「素材への思い−力と可能性−展」(美濃加茂市民ミュージアム /岐阜)
2007 陶・伊藤慶二「うつわ」展「壺の内側を観る眼」壺中楽(鹿児島)なかむらギャラリー(久留米、福岡)
「土から生まれるもの:コレクションが結ぶ生命と大地」展 東京オペラシティ アートギャラリー(東京)
2008「茶の湯−内田繁と7人の工芸作家−」ギャラリー一穂堂(東京)・ニューヨーク
aim’08「土から生える」展(国際陶磁器フェスティバル美濃 aim ’08 実行委員会)市之倉窯場跡(多治見、岐阜)・小山富士夫邸と花の木窯(土岐、岐阜)
2009「伊藤慶二『面(つら)』展」JR名古屋高島屋(名古屋)
2011「伊藤慶二 こころの尺度」(岐阜県美術館 /岐阜、パラミタミュージアム /菰野、三重)
2012「3.11鎮魂−魂の宿る場−」 スペース・アルテマイスター(会津、福島)
「小さなトルソー」一穂堂(東京)
2013「伊藤慶二展 ペインティング・クラフト・フォルム」岐阜県現代陶芸美術館(多治見、岐阜)
2013「伊藤慶二+鯉江良二 土に宿すかたち−パイオニアたちの仕事−」楽翠亭美術館(富山)
2015「パラミタ大賞展」パラミタミュージアム(菰野、三重)
2015「土を思うがままに」グランビスタギャラリーサッポロ(札幌)
2016「人が大地と出会うとき」愛知県陶磁美術館」(瀬戸、愛知)
2016「革新の工芸−“伝統と前衛”、そして現代−」東京国立近代美術館工芸館(東京)
2016「伊藤慶二 茶陶展示−自在−」柿伝ギャラリー(東京)
2017「2016年度日本陶磁協会金賞受賞記念 重松あゆみ・伊藤慶二展」 壺中居(東京)
「SHIBUI(長澤和仁と二人展)」galleria Monopoli miofficinesaffi(ミラノ、イタリア)
「忘れてはならない記憶 伊藤慶二展」オリエンタルデザインギャラリー(広島)
2018「伊藤慶二 土から生まれるかたち」ギャラリーNOW(富山)
2018「伊藤慶二・板橋廣美 二人展」ギャラリー数寄(江南、愛知)
2019「伊藤慶二陶展−土とたわむれて−」和光ホール(東京)
2021「3.11鎮魂−魂の宿る場所−」10周年記念展 スペース・アルテマイスター(会津、福島)
2021「3.11鎮魂 移動展」ギャラリー数奇(江南、愛知)
2021 北陸工芸の祭典「GO FOR KOUGEI」勝興寺(富山)
2022「伊藤慶二展」小山登美夫ギャラリー(東京)
2022「伊藤慶二展」アートサロン光玄(名古屋、愛知)
2022「ホモ・ファーベルの断片−人とものづくりの未来−」愛知県陶磁美術館(瀬戸、愛知)
橋本美術(名古屋)2019「盌展」2020「素描展」
L garelly(名古屋)2009「光の石、精神の果」 2014「土岐、暮れの刻、薪窯の火色」
2016「過去から未来へのまなざし」2018「小さきものたち」2021「象」
〈グループ展〉2013「three 次展」2015「four 次展」「four 次Ⅱ展」
※年表中に全ての画廊での毎回の展覧会を記載できておりません また表記方法が統一しておりませんことをお許しください
*展覧会|百草
〈個展〉
1998 10月 「伊藤慶二展 1965–1998」
1999 8月 「伊藤慶二展|ヒロシマシリーズ」
1999 10月 「開廊一周年記念 食のうつわ展」・開廊1周年記念 佐々木志年 料理会
2002 10月 「伊藤慶二展|尺度シリーズ」2004 11月「人形(ひとがた)–風景の中の彫刻展」
2008 8月 「伊藤慶二展|つら・づら」
2018 10月 百草20周年記念企画「伊藤慶二展」
2022 10月「伊藤慶二展」
〈グループ展ほか〉
2000 1月 スタジオMAVOにて、ワークショップ
2001~2012 干支香合を制作
2001 7月 「写しの美学」
2004 11月 「人形(ひとがた)風景の中の彫刻展」
2005 7月 「夏のお茶展」(彫刻・茶器・食器)
2006 12月 「山田節子が選ぶ 器量ある7人の仕事」
2008 aim ’08「土から生える」展(国際陶磁器フェスティバル美濃 aim ’08 実行委員会)
2013 9月「お茶の愉しみ お酒の悦び」
2008年に行われた美濃を舞台にしたアートプロジェクト「土から生える」。ジャンルを超えた作家と美濃らしいそれぞれの場との出会いにより生まれた素晴らしい展示であった。12年経た今、その評価が高まっており続編計画の動きもある。
プロジェクトメンバー、主宰の一人という立場でもあり、この秋から春にかけ、百草で開催する当時参加作家三氏の展覧会にこのサブタイトルを付けた。新しいプロジェクトに向けてバトンを繋ぎ助走とするという意味でも。(安藤雅信)
当時の参加作家三氏を迎え、企画運営を務められた高橋綾子氏進行により、山田亘氏撮影の画像をご覧いただきながら当時を振り返ります。
10.8 sat 15:00–16:30
登壇 伊藤慶二・内田鋼一・森北伸・高橋綾子
場所 百草 二階
定員 50名 (先着順・当日は予約順にご案内いたします)
参加費 500円(当日支払い)
予約開始日時 10.2 sun AM10:00より
予約方法 下記URLからご予約いただけます。
〒507-0013 岐阜県多治見市東栄町2-8-16
多治見ICより車で10分
JR多治見駅より東鉄バス13分「高田口」下車1km
tel. & fax. 0572 21 3368
google maps
ももぐさカフェ
伊藤慶二展 ライトランチメニュー
11:00–18:00 (L.O 17:30) メニュー・席の予約不可
スケジュール
10.29 sat–11.6 sun one room exhibition: atelier scrumpcious
11.12 sat, 13 sun 交種茶会: 菓子屋ここのつ・安藤雅信
11.19 sat–12.18 sun 百のギフト
1.14 sat–1.29 sun 百草冬百種展