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蚕衣無縫 XIII
真木千秋・オカベマサノリ

2022.6.3 fri–6.19 sun
11:00–18:00

6.7 tue, 15 wed, 16 thu wed休廊
真木千秋 在廊日: 6.3 fri, 4 sat
真木テキスタイルスタジオ 大村恭子 在廊日: 6.4 sat
オカベマサノリ 在廊日&受注会: 6.3 fri–12 sun
沼田みより 在廊日: 6.3 fri–5 sun
6.4 sat 15:00– 真木千秋さんによる映像トーク「ganga 日々の営み」と繭からのずり出し実演
6.3 fri–12 sun 11:00– オカベマサノリ 古代ビーズ ミニトーク

真木千秋

私たちの織りの素材である糸芭蕉、苧麻が育ち、少しずつ収穫してそれぞれの糸づくりが日々の仕事になりました。春繭のずり出し糸も、インド藍の世話もすべて同時進行中です。今蚕衣無縫にてその糸を他の糸とともに織り上げた衣や暮らしの中の布を触り見ていただけたら幸いです。
地元の春繭から手でずり出す糸の揺らぎ、自然な形態の糸をながめていると、糸だけを楽しめるような布を織りたくなりました。
芭蕉や苧麻の力強さと美しさ、そして高温多湿に身に纏う気持ちよさを最大限生かせる衣(スディナ)をつくりました。安藤明子さんの手になる芭蕉や苧麻入りの衣がまた新しい表情を見せてくれることが楽しみです。

プロフィール

1960年に武蔵野に生まれ育つ。80年武蔵野美術短期大学工芸テキスタイル科卒業後渡米。ボストン美術館付属美術大学校、マサチューセッツ州立美術大学の夜間部を経て、ロードアイランド造形大学に編入。
85年 アメリカ・ロードアイランド造形大学卒業後、ニューヨークでフリーのテキスタイルデザイナーとして働くその間、中南米、東ヨーロッパなどを訪れる。
90年 東京の里山・五日市に住みついて創作活動をはじめ、インドでの織物作りに本腰を入れ始める。
97年 石垣昭子さん、真砂三千代さんと南の島発信「現代の衣」真南風プロジェクトを始める。
06年秋、あきる野市の仕事場「竹の家」の敷地内に竹林の店をOpen
10年 ヒマラヤの麓に半農半工を志す人々ととともにganga工房を立ち上げ、日々素材作りから、紡ぎ、染め、織り、仕上がりまでの布づくりを始める。
17年 2月、Studio Mumbai・ビジョイジェイン氏の建築によるGanga Maki工房 オープン
19年 4月 ミラノ アートギャラリー ASSAAB ONEにてThe Alchemy of Weaving 展 〜ヒマラヤの麓、Ganga Maki工房に年間9ヶ月ほど暮らし、素材となる芭蕉、苧麻、インド藍など他染料植物を育てながら仲間とともに織り物づくりをしている。

出品内容

・gangaあい&芭蕉
ganga裂 (Art piece) 小さなサイズ
細巾反物、スディナ、芭蕉紙

・新たしいアイテムのルーピー(輪っかストール)は
シルク生地で色も柄もいろいろ。

・シルクオルガンザ(ミュージアムピース)
春色染め ピンク、黄色、黄緑、藍、赤、グレー

・Makiの新作春服や暮らしの布
パンツ、スカート、チュニック、ブラウス、羽織物、小物、クッションカバー、ベッドファブリック、細巾反物など

イベント

真木千秋さんによる映像トーク「ganga 日々の営み」と繭からのずり出し実演
6.4 sat 15:00– 参加無料

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オカベマサノリ

1964年福岡生まれ。30代からアクセサリーを制作。1300年前に作られたチベットのdzi beads(ズィー・ビーズ)と出会ってから、古い時代のビーズに魅せられていく。おもに1000年以上前に作られた古代のビーズを使って、アクセサリーを制作。
暮らしのコーディネーターであり、「沼田塾」を主宰する妻の沼田みよりと共に、暮らしの提案をしている。全国のギャラリーで個展開催。

出品内容

a ローマングラスビーズ
およそ2000年前の古代ローマ期のもの。透明感のある淡いグリーンや濃いブルーなど。色や形も美しいガラスのビーズ。

b モザイクビーズ
およそ2000年前の古代ローマ期のもの。市松模様や鳥など、表面だけでなく中まで色の違うガラスを組み合わせて作られている。素晴らしい工芸品である。

c モザイクビーズ & ゴールドサンドウィッチビーズ
およそ2000年前の古代ローマ期のもの。ブルーやブラウンのガラスに白い線がスッと入っている。美しいビーズである。ゴールドサンドウィッチビーズは、ガラスとガラスの間に金箔を挟んである。これも2000年前の古代ローマ期のもの。表面の薄いガラスが欠けているものが多い中、このように状態の良いものは貴重である。

d モザイクビーズ
1500年ほど前のササン朝ペルシャのもの。色の違うガラスを組み合わせて作られている。ペルシャのモザイクもまた美しい工芸品である。

e ガラスの容器片
およそ2000年前の古代ローマ期のもの。スパイラルレースの模様が美しい。エジプトのアレキサンドリアが生産地。このような容器片は美術品としても高い評価を受けている。

f 銀化ビーズ
およそ2000年前の古代ローマ期のもの。銀化とはガラスの表面と土の化学変化によって起こる風化現象。 白っぽく見えるがキラキラと輝いている。中はブルーのガラスだと思われる。自然と時間が作る芸術品。

イベント

オカベマサノリ 古代ビーズ ミニトーク
6.3 sat–12 sun 11:00–

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百草アトリエ・安藤明子

「ミミちゃん格子」と呼んでいる、ナチュラルウールとタッサーシルクナーシ、ウールを赤や青に染めた糸でブロックチェックを百草サロン用に何度か織って頂いたことから始まり、先回はそれを、敢えてシンプルな黒白のギンガムチェックに織って頂きました。
今回は春夏シーズンということで、リネンを主にいくつかの配色のギンガムチェックをお願いしました。
リネン100%の黒白ギンガム、赤白ギンガム、ベージュ白ギンガムは、手の跡は控えめな優しい織物となりました。
リネン晒×リネンナチュラルベージュ、リネン黒×リネンブラウンの二種は、それぞれタッサーギッチャーとタッサーナーシを緯糸に入れたことで、gangaらしい野性さ逞しさが加わりました。

出品内容

〈リネンとタッサーシルク〉5種ギンガムチェックの百草サロン
〈シルクオーガンザ〉百草サロン
〈芭蕉と苧麻〉のスディナ地のとんがり上衣
ほか

蚕衣無縫|天衣無縫の仕事

2001年5月「蚕衣無縫|真木千秋と百草が提案する布と衣」展初回より21年が経ち、今回13回目を迎えます。
『蚕衣無縫(さんいむほう)』とは当時、土田眞紀さんに展覧会の文章を依頼し、その時に生まれた、まさに真木千秋さんにまつわるこの展覧会タイトルにぴったりな言葉だと思っています。

千秋さんにとって百草は実験の場。素材作りの中での新たな発見、試みからの作品を表現しインスタレーションを披露する場として挑んでくださっています。無用の布である場合も、それがストールや、今回はスディナという形を取っている場合も。それらの出発点から、こなれて暮らしに寄り添う衣服や住の真木テキスタイルスタジオ製品、そして布や織り紐。千秋さんとやり取りし形になった布を素材に百草サロンや上衣などを初回から作らせていただいている百草とのコラボレーション。
これら三方向の展示を初回から続けている、考えてみれば稀有なこと。まず真木千秋さんのお仕事そのものが、21年を経た今ではなおのこと、稀有であると痛感します。是非この奇跡のような営みを、特に若い世代の方にご覧いただきたいと思います。

ここで改めて初心に帰り、土田眞紀さんの文章を転載いたします。

天衣無縫の仕事|美術史家 土田真紀

法隆寺金堂壁画の飛天、船の舳先に立つサモトラケのニケの像、あるいはボッティチェルリの春の女神など、この世の存在ならぬ女性が身に纏っているのはいつも、微かな風にも翻る薄衣である。それは、人間の手技では到底及ばないほど細く紡がれた糸で織られた、最高の布でつくられているにちがいない。「天衣無縫」という言葉があるように、縫い目のような人工の手の跡はなく、あるがままそのままで完璧な布、完璧な衣、まさに「神業」の産物である。
 あり得るかぎり上質な布を求めて、人間の手仕事もしばしばこの「神業」をなぞろうとしてきたのかもしれない。けれども人間の手は人間の手であって神の手ではなかった。「神業」に近づこうとする布は、むしろ自然な姿からは遠ざかり、人工の極致となってしまうのが人間の宿命なのではなかろうか。高度な職人技の産物が、しばしば技巧ばかり目について魅力的でないのはそのせいかもしれない。そこにあるのは「天衣無縫」とは対極の世界である。
 真木千秋さんも百草の安藤明子さんも、最高の布、最高の衣といった一つの方向へ突き詰めていく仕事とは別のあり方で仕事をしている。ともに糸や布を誰よりも大切に考え、用いている人であるが、普通に職人技と呼ばれるものと異なっているのは、糸をあるべき布に、布をあるべき衣に従わせるのではなく、糸があって布があり、布があって衣があるように仕事をされてい る点である。
 どれほど完璧に近づいたところで、人間が作るものには手の跡も残れば、縫い目もなしではすまされない。であるなら、与えられた糸や布をできるかぎりまるごと引き受け、生かそうとすることこそ、自然な人間の技、つまりは人間にとっての「天衣無縫」なのではなかろうか。まして絹は、まさに「天の虫」であるところの蚕が紡ぎ出す人間にとって天与の糸であり素材である。そうした素材を力で人間の側に引き寄せるのではなく、できるかぎり素材に寄り添おうとする二人の仕事は、すぐれて「女性的」な精神の産物であり、仕事であると思う。そうした布や衣は、その使い手や着る者を覆い隠し、うわべを飾るものではなく、また着る人を選んだりもしない。むしろ誰にも似合い、その人なりの姿を映し出して、外見と中身を見事に一致させる。ただ一つの最高を創り出すよりも、一つのものさしで計られるような価値観から自由な、それぞれによいという仕事をする方がはるかに大切だと私には感じられる。

オカベマサノリさんの編み紐

今回も前回に引き続き、古代ビーズのアクセサリーを作るオカベマサノリさんとの組み合わせです。
2001年「蚕衣無縫 Ⅰ」を機会に、当時から真木千秋さんのお仕事を紹介されていた沼田みよりさん、そしてオカベマサノリさんとの交流が始まりました。オカベさんは、ビーズの収集とともに自身の手による糸編みをどんどん極めていかれました。オリジナルの繊細で強靭な編み紐は、同じものが二つとない大切なビーズを綴るオカベさんのお仕事の要(かなめ)です。

真木千秋さんによる映像トーク「ganga 日々の営み」と繭からのずり出し実演

6.4 sat 15:00– 参加無料
ご予約受付開始 5.28 sat 10:00–
・ご予約優先
・当日参加可能(予約状況や当日の混雑状況によって参加できない場合があります。)

今回展のためのやり取りの中、千秋さんのお言葉で、このような一節がありました。
「今、『蚕衣』と書いて、現在ほんとうにそうなってきたなあと思いました。買って使う絹も蚕からですが、やはり自分たちで糸をつくることは何よりも素材に近づくことだなとつくづく感じます。」
ganga工房での日々の営みはまさに制作以前の素材を産み育てることが基盤になっています。そんな様子を、今回インドから駆けつけてくださった真木千秋さんにお聴きし観る会をいたします。繭からのずり出し実演もお楽しみに。

オカベマサノリ 古代ビーズ ミニトーク

6.3 sat–12 sun 11:00– 毎朝、オカベマサノリさん在廊日の始まりに、古代ビーズの歴史や種類などのお話をして頂きます。識ることにより俄然面白く愛おしくなります。気軽にご参加ください。

〒507-0013 岐阜県多治見市東栄町2-8-16
多治見ICより車で10分
JR多治見駅より東鉄バス13分「高田口」下車1km
tel. & fax. 0572 21 3368
google maps

ももぐさカフェ
真木千秋さんから届くインド山岳地方にしかないスパイス、逸物ジャキアを使ったサブジ(野菜の炒め煮)を作ります。ルヴァンのパンプレートに添えてどうぞ。また、〈菓子屋ここのつ〉あんバタートースト、〈Organic Vegan Sweets〉季節のジェラート他、ももぐさカフェ常設メニューをお楽しみください。
11:00–18:00 (L.O 17:30) メニュー・席の予約不可

スケジュール
6.20 mon–6.22wed 展示替えのため休廊
6.23 thu–7.31 sun 常設展示(火水休廊)
8.1 mon–8.5 fri 夏季休廊
8.6 sat–9.5 mon 常設展示(火水休廊)
9.6 tue–9.9 fri 展示替えのため休廊
9.10 sat–9.25 sun 「土から生える1 森北 伸展」(休廊日未定)
*「土から生える3 内田鋼一展」は2023年4月に延期となりました