ギャルリももぐさ/百草
作品/百草
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■12月9日(土)、12月10日(日)の18:00〜20:00 イベント ナガオカケンメイ「音楽百話 1」を開催します
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新しいデザイナー像 もうひとつのデザイン

 

世の中の進化により例えば建築の世界は相変わらず重厚なものを建てる一方、大工さんの方角にある人間ができる範囲に広がったり、自然環境の方角へエネルギー効率などへと広がる動きが出てきました。これまでの価値観が変化して、新しいそのジャンルの進む道の模索が始まっているとしたならば、僕の住む「デザイン」の世界はどんな進化があるのか。18歳から35歳まで、とにかく環境問題のことも、社会性のことも考えず、ただひたすら憧れのデザイナーやメディアを意識し、奇抜なアイディアを意識して仕事をしてきましたが、その創作の現場を憧れのデザインオフィスの居心地の中から街中の店、売り場に移した時、あまりにもそのデザインの扱いや見え方の違いに驚くとともに、今まで何をやってきたのかと、焦ったのが2000年。デザインのやっていることがまだまだ、メディアや業界団体に守られたきれいごとではないかと疑問を持ち店を持って痛烈にこれからの新しいデザインの進路を考えなくてはと思いました。デザインは過保護な環境にいたのだと思います。そして、過保護に守られることで光るものだったように思います。
デザインの進化の手前には、「まずは、新しく作るってのをやめるって発想でデザインしてみようよ」がある。2000年に立ち上げた私たちD&DEPARTMENTのショップバッグはよその店の紙袋にただ名入りのガムテープを貼り再利用することでしばらく拒否されましたが、やがて「その紙袋だけを欲しい」と言われるまでになりました。
世の中にとって「新しい」ことは必要です。しかし、それは「真っ新な材料で作らなくてもできること」です。
この企画展では、7つの「新しく作らない」発想で作ったものを通じて、もうひとつのデザインの生まれかたを感じて頂けると嬉しいです。

                                 ナガオカケンメイ

 

     

 

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デザイン活動家  ナガオカケンメイ

1965年 北海道室蘭生まれ

1968年 愛知県知多郡阿久比町へ引越す 中1の夏休み中にテクノポップを聴いて衝撃を受ける。
     よく聴いていたのは「PLASTICS・ヒカシュー・ゲルニカ」

1984年 経験を偽り北斗社企画室入社(東京 本郷三丁目)不動産のチラシにデザインを学ぶ

1990年 日本デザインセンター入社 偶然、隣に原研哉氏がいた。その縁か、原デザイン研究室設立に参加

1997年 モーショングラフィックス’97開催(AXISギャラリー) でスポンサー集めから全てを行う。
     会場構成を吉岡徳仁氏に依頼。その仕事の仕方にしびれる。

1999年 東京都港区三田の自宅で収集していたリサイクル品がある日、店に見えて店をやることにする。

2000年 D&DEPARTMENT PROJECTを世田谷区奥沢に開業 営業時間は朝4時まで
     車を3台持つ夢を立てる。スポーツカーのポルシェ、セダンのW124、SUVのレンジローバー

2002年 カリモク、ノリタケ、アデリアなど数社と60VISIONを開始 
      ビル1棟を借りてみたくて借りる。大阪店を南堀江にオープン

2003年 グッドデザイン賞の「売ることに無頓着」な姿勢に腹が立ち、受賞商品の買取「USED G」開始 
     ポルシェを購入
      
2005年 d long life design誌創刊 以後2008年までに21号発刊 
      創刊号からの深澤直人氏の連載「ふつう」は今も続いている

2007年 北海道店をオープン 初のフランチャイズ

2008年 日本デザインコミッティメンバーになり、松屋銀座にて「DESIGN BUSSAN NIPPON」開催
            47という日本を意識したいと思う。
      静岡店をフランチャイズでオープン

2009年 小冊子d long life designを旅行デザイン誌「d design travel」に更新し創刊
     メルセデスベンツW124を購入

2010年 鹿児島店をフランチャイズでオープン

2011年 突然、川久保さんから電話がかかってきて一緒にお店をやることに。
    「GOOD DESIGN SHOP」を東京表参道に開業

2012年 日本初の物産ミュージアムを渋谷ヒカリエにオープン
      落語家の柳家花緑師匠とd47落語会開始

2013年 山梨店、韓国ソウル店オープン
      川久保さんとの店「GOOD DESIGN SHOP」のアメリカニューヨーク店がキップスベイに開業

2014年 パリの老舗百貨店ル ボン マルシェからの誘いで期間限定出店 
     日本のロングライフデザインはパリで大評判に
      大学でロングライフデザインを教え始める。

2015年 D&DEPARTMENT TOYAMAオープン
     沖縄のライブ「インタリュード」に通い、SUMIKO YOSEYAMAにはまる

2016年 21_21 DESIGN SIGHT「雑貨展」にて中古品の日用品で構成した「d mart USED」を発表
      d design travelの別ライン「d news」創刊

2017年 やはり、その土地に行ってもらいたい思いからトラベル誌のツアー化「d TOUR」始動 佐賀、富山     で開催
     レンジローバーを購入中にW124が廃車

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「社会デザイン」

ドイツの現代美術作家であるヨゼフ・ボイスの作品を目にした時、理解は出来なかったけれど新しいアートが始まったなと直観した。それまでの美術の文脈に縛られず、美術の開口部が開いて社会や生活と繋がったような印象だった。「あらゆる人間は自らの創造性によって社会の幸福に寄与しうる、すなわち、誰でも未来に向けて社会を彫刻しうるし、しなければならない」(artscapeから)という概念を提唱し、ボイスは社会彫刻と呼んでいた。見せる美術から、一緒に考えようという美術になったのだと思った。
 「デザインをしないデザイナーだけどね」とケンメイさんは言う。確かにトラベル誌を出し、店を出し、家具メーカーに復刻を申し出たりする多様な活動の全体像の表層だけを見ると、何をデザインしているのか分かりにくい。グラフィックでもなくプロダクトでもない、デザインの既成の価値に収まりきらない新しいデザイナー像という個の在り方を追っても見えてこず、ボイスが社会を彫刻したように、社会をデザインするという大きな問い掛けをしているのがケンメイさんだとみれば、なるほど21世紀に必要なデザインだと思えないだろうか。持続可能なアイデアを社会デザインの輪の中で出し合い、デザインをしないデザインが自分たちの生活に何かの問いとなり、それが創造力となって社会に寄与する一つの手立てを与えてくれる。
 常に新しいものを出さなくてはいけないという強迫観念のようなものが、資本主義には付きまとい、競争社会の中ではデザイナーとしての自己表現も必要となってくる。ケンメイさんはそのことを否定するのではなく、ちょっと待ってそれよりも大事なことを忘れてるんじゃないと問いかけてきたのだろう。既にあるものの新しい見え方を紹介し、眠っている価値を探し出したり、消費された価値をもう一度復活させて売るという責任を伴う活動は、何でもないことのように見えるが、新しいものを売ること以上に大変なことだ。「ちゃんと生まれたデザインは、ちゃんと売らないと、ちゃんとしたデザインにならない」「量産されていてもいいから、思いがあるものが欲しい・・」(繋ぐ力展より)ケンメイさんのこれらの言葉に宿る思いを、若い世代に確実に広げていきたい。与えられたテーマをデザインするだけでなく、それがその先どうなっていくのか、その時間まで含めた社会デザインを人に伝えるのはとても難しいが、とても豊かな気持ちにさせてくれることは間違いないだろう。
 今展では、ケンメイさんの今までの活動をd&departmentを通して俯瞰して貰おうと思うが、観るだけに留めず多様なケンメイ像も想像して頂きたい。そうすることで我々も社会デザインに寄与する一歩を踏み出すことになる。
                                                                 百草 安藤雅信
 


 

 

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