昭和初期からの歴史を誇り、柳宗悦ら民芸運動の中心人物との交流を続け、作り手にとっても使い手にとっても、中央文化の玄関口であった。店舗だけでなく工房も持つ製造販売の形態や、作り手をきちんと紹介していくその姿勢は、私たち百草にとっても大きな目標であり、宮沢賢治の命名の通り、光を発する原点でありながら原野に光を照らし続けている理想的なお店である。そしてその光の結晶の一つが、年二回ミニコミ誌「てくり」を発行している「まちの編集室」である。岩手の作り手を集めた別冊「te no te」など書籍を中心に、全国に発信する力を付けつつある。本業を持ちながらの発行は、熱意があってのこと。その純粋な熱意は、これから若い作り手達を大いに励ましていくだろう。「Holz」の平山君は店舗を持ちながら、オリジナル製品を地道に開発し、中央とのパイプを持って行動している。木製品を得意とし、また出身地の宮古を新たな視点で見直し、これから活性化させていくだろう。「carta」はカフェに留まらず、秋田と青森を繋ぐ「さんかく座」という作り手と使い手や様々なショップを繋ぐ活動をしている。若い人々の生活全般への関心を、多様性のあるイベントですくい上げ、次への原動力になるよう作り上げている。これから新しい潮流を作り出していくだろう。今回唯一個別の作家として取り上げたのが、舞良雅子さん。東北という地域性を感じさせる作家が多い中、現代美術の感性でテキスタイルに取り組んでいる。糸からの発想の工芸と違い、繭から布になるまでそれぞれの段階を新たな切り口で見せる作品はいつも新鮮である。