ギャルリももぐさ/百草
作品/百草
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内田鋼一 加彩広口大壺
山本昌男 「中空」たからもの ゼラチンシルバープリント 2008
内田鋼一展 V  + 山本昌男

2011年
12月10日(土)〜12月25日(日)
11:00〜18:00  会期中無休

作家在廊日
内田鋼一  12/10(土)11(日)17(土)
山本昌男  12/10(土)


対 談  内田鋼一 × 安藤雅信

「教科書に載っていない焼き物史 1」
12/17(土)
17:00〜18:00 対 談 無料
18:30〜20:00 懇親会 参加費1000円(予約制)
場 所  百草


◎百草カフェ

会期中、季節の野菜をふんだんに使ったルヴァンのパンのランチプレートをご用意致します


◎出張カフェ

12月10日(土)「麦の家」カフェ
山本家御用達の八ヶ岳の南麓、北杜市大泉町にある
「Sweets & Bread 麦の家」店主が百草カフェに入り、国産小麦や八ヶ岳の新鮮な食材を活かした焼き菓子や天然酵母の焼きたてパン、サンドウィッチなどをサーブして下さいます


◎カフェ「まっちん」
12月18日(日) 25日(日)

両輪走行の強さ

ナログの最終世代と言われている30代の若者と感覚的にも分かり合え、音楽談義に花が咲く機会が増えた。我々の若い頃は音楽の変革期であり、流行の移り変わりも早く、同世代共有は出来ても世代をまたぐことは難しかった。それがどうしたことか、熟成期に青春時代を過ごした彼らは驚くほどの情報量を持ち、かつフラットに物事を見ているから学ぶことも多い。しかし、何か足りないような、もどかしさを感じることもある。
 流行と共に時間軸で聴いてきた我々世代は、新しい音楽と同時にそれが放つ香りのような技術の革新であったり、ファッションの動向など付属するものも同時に嗅いできた。一方、香りを嗅ぐことが出来なかった彼らは、それらを引き算し、純粋に音楽のみを吸収して実にセンスよく自分の音楽領域を作っている。彼らにとって重要なことが、「個人として何を表現するか」より、「受け手として何を選択し、自分のものとして吸収するかによって、アイデンティティーを築いていく」ことに移ってきているように思う。もどかしさの正体は、容赦のない引き算と感覚に頼り過ぎる判断であろうか。しかし、このような傾向は音楽の聴き方だけに表れた現象でなく、創作する側にも見られることである。焼き物の世界でも自我の発見の産物である自己表現系の作品を見ると古くさく感じられるのはその所為かもしれない。表現の世界もこれからは受け手表現が主流になっていくだろう。

 「内田鋼一さんの人気というか凄さが分からないんですけど、教えて頂けますか」と尋ねられる事が多い。作品に凄さ(自己表現)を出していた前時代の作家のように見ていたら、分からないだろう。内田君は先述の受け手表現の走りのように思われるが、20年余の作家歴や日本だけでなく世界の窯場を実地検証してきた焼き物の知識と技術で、受け手表現の弱点を補う以上に実力を身につけてきた作家である。また、一般的な骨董的価値観に頼らず、歴史の表舞台に出なかった焼き物にも多く愛情を注ぎ、骨董屋の店主が尋ねに行くほどの博識の持ち主である。学者の解釈ともまた違い、作り手だから分かる新しい解釈は、焼き物の歴史を塗り替える必然に満ちあふれている。
 初期の民芸や小山冨士夫の轍を意識しながら、更に現代性も伴い全速力で走っている彼に伴走することは難しいであろう。例え、沢山持っている技術や表現の引き出しの中を見せて貰っても、その先に表れてくるものは見えてこない。彼の特徴は受け手による広さと実体験に裏付けされた深さの両輪にあるからである。今展、作品のさりげない佇まいの奥に、彼が溜めてきた焼き物への愛情を感じ取って欲しい。その積み重ねが、内田作品との距離を近づけて行くであろう。

百草 安藤雅信
内田鋼一 焼〆茶注
内田鋼一 白茶碗

写っているものと見えてくるもの

先月イタリア中部とパリを旅行した。地震や台風などの天災が余りない国の文化の有り様は当然違ってこようが、自然は別として街並が風景になる歴史の継続性はやはり羨ましく思った。街の中心にある教会に行けば、中世の絵画や彫刻はいつでも見られる。日本では生活と工芸が身近にあるが、欧州では美術がその役目を担っている。そんな欧州で山本さんの作品がとても評価されているのは、絵画出身の写真家であることも大きな要因であろう。しかし、山本さんは果たして写真家なのだろうか。
 ターナーやモネ、華岳に牧谿など具象画なのに抽象画のように見えるものに魅力を感じる。山本さんの写真も具象を題材としているが、それは写すという行為までの話であり、現像の過程で画家の目になり、具象的な要素は画面構成の一要素として扱い、モチーフの本来の意味は減少させられ抽象画のような印象を持つ。そうすることで逆に、「これは何だろう」という創造力が喚起し、更に画面全体へとそれは膨らむ。また、山本さんの作品は、写真を平面として扱わず、画面に合わせて見せ方を工夫し、箱に入れたりアンティークの額に入れたりして一つのオブジェとして完成されている。写真家でもあり、現代美術家でもあるということになろうか。

 今回、内田君と山本さんの2人展が成立したのは、名古屋の書肆壺中天で上梓された「川」が基になっている。山本さんの写真に内田君の陶函か陶板が付いている、オブジェとしても魅力のある写真集である。百草での展示で、火花を散らすか融合するか、楽しみである。
                        百草 安藤雅信


山本昌男 年表
1993 「空の箱」シリーズの作品の発表を始める
1994 アメリカで初の個展開催
1996 ニューヨークで個展開催など
      アメリカ各国に作品が広まる
2001 「中空」シリーズ発表
2006 ヨーロッパでの展示も盛んになる
2008 「川」シリーズに取り組む
2009 モスクワで個展開催
2011 北京、ブラジルでの展示が叶い、世界各国
     で作品が紹介されている
2012スペイン、イタリアでも個展開催の予定

*主な作品取り扱い画廊 / 個展開催年
Yancey Richardson Gallery, ニューヨーク / 96,01,03,08,11
Jackson Fine Art, アトランタ / 99,03,05,09
Craig Krull Gallery, サンタモニカ /04,05,08,11
Galerie Camera Obscura, パリ / 06,11
Fifty One Fine Art Photography, アントワープ/ 09
Mizuma Art Gallery, 東京/ 06,09
Gallery Sincerite, 豊橋 / 93,99,06,09

*主な作品収蔵美術館
Harvard University Art Museums, ケンブリッジ
Victoria&Albert Museum, ロンドン
Meison Europeenne de la Photographie, パリ
The International Center of Photography, ニューヨーク
Musei Civici Comune di Reggio Emilia, レッジョエミリア(イタリア)
Museum of Fine Arts, ヒューストン



www.yamamotomasao.jp

川、特装本
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