ギャルリももぐさ/百草
作品/百草
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木蓋 三谷龍二   ガラスポット 辻和美
暮らしの造形 1

辻和美 三谷龍二

2010年
10月26日(土)〜11月7日(日)
11:00〜18:00
会期中無休

作家在廊日 10/23(土)・24(日)


◎ももぐさカフェ

ルヴァンのパンで作ったシンプルなサンドイッチと季節の野菜のサイドメニューをご用意いたします

 

 

 

 

日常を切り取る


先日NHKで昨年亡くなったピナ・バウシュの舞踊を観た。男と女のすれ違いを台詞は使わず、小道具と動作だけで見事に表現していた。世界標準の現代美術を感じた。個人の日常を切り取り、それを誇張したり引き算することで、これだけ普遍性が得られるのかと新鮮だった。

ボブ・ディランの音楽やコムデギャルソンの服にも、同じように日常の切り取り方の鋭さを感じる。素通りしてしまう日常に問題点を見出し、可視化するのが現代美術の役割だとすれば、辻さんがアメリカで目の当たりにした新しい技術・アイデア・素材で無理に工芸アートを制作することや、ただの格好良さ、また自己実現を表すだけのものは、日常との関わりが見えず、一時的な驚嘆にしかならないだろう。日常を鋭く切り取り抽象化できたものは、普遍性を持つのである。
誰しもが日常を有し、生活をしているわけだが、日常との関わりは自ずと表現に出るとは限らない。出るか出ないかは、辻さんが憧れの作家から感じた「人間の奥の方からにじみ出てくる必然」があるかないか、それが分水嶺となろう。必然に至る過程は、日常への多くの疑問符で成り立っている。

最初に送られてきた辻さんのA4二枚にびっしり書かれた年表や、三谷さんが「ほぼ日刊イトイ新聞」で公開されている対談とブログでも、作家に至るまでの迷走が綴られていてとても面白い。多くの疑問符が迷走を促し、原動力とエネルギーの持続力に繋がっている。彼らの迷走は現在進行形で、二人が推奨している「生活工芸」は辻さんプロデュースのもと、今秋、金沢21世紀美術館で催されるし、三谷さんも松本で工芸の五月という展覧会を継続されている。更に、辻さんが金沢でショップを開き、三谷さんも、来年松本で10cmというギャラリーを始められる。

文明と共に変化し続ける日常生活に合致することが、生活工芸には求め続けられるであろう。離れてみたり、中に入ってみたりして、常に日常に鋭く関心を向けていなければならない。現代美術と表裏一体である。暮らしの造形とは、作家が切り取った日常を、生活道具や彫刻、絵画に置き換える行為を言う。二人の活動や興味の幅の広さを知ると、、日常食器だけでなく、美術作品を制作することに必然を感じるし、それは自然な行為だと思えてくる。                                    

百草 安藤雅信

 

 

 

辻和美

1964年金沢生まれ 4才から絵を習いはじめ、高校まで日本画を描く 自然な流れで美大を受験 金沢美術工芸大学視覚デザイン入学 クライアントがいるグラフィックの制作に興味がわかず、イラストばかり描いて4年を過ごす ファッションに興味がありDCブランドを受けるが失敗 カリフォルニア美術工芸大学入学 イラストを絵の具以外の素材のステンドグラスにしてみた 大学では吹きガラスを学ぶ 教授は彫刻家 吹きガラスの竿からアートを!というガラスアート全盛期 またスタジオグラス運動の成熟期でもあり、高い技術力、新しい素材、これで何が出来るか? だれもやっていない新しい技法を探すことが、とても大切な時代だった 現代美術を同時に大学で学んでいた私が尊敬する作家は全て女性作家で、強くて、繊細で、ぶれない思想を持って制作していた 人間の奥の方からにじみ出てくるような必然というか・・・ ガラスアートは表面的で、技術を競い合っているようにしか思えなかった 私にはガラスアートを作ることが出来なかった 結局何がやりたいか決まらず卒業 イタリアに数ヶ月、その後帰国 金沢卯辰山工芸工房ガラス工房専門員となる 日本の工芸と出会う それは、混沌とし、アメリカのガラスアート、クレーアートのアレンジか、伝統的な茶道具、器物、大きな花器、日展 これを全て工芸と呼ぶのか?ここにも自分の居場所を見つけられず

1999年 ガラス工房「factory zoomer」を設立 ガラス器の新しいスタンダードを目指し、デザイン・制作を行う 吹きガラスは器(コップ)を作るために出来た技法であり、手で器を持って食べる日本人ほど食器を愛でる人種はいないので、美しいグラスを作っていくことは自然だと思う また、美術家として、日常生活における歪みや危うさをガラス素材を通して表現 活動を二つに分ける

2005年「factory zoomer/shop」オープン

2008年『Daily Life?? 辻和美ガラス作品集』上梓

2009 金沢市文化活動賞受賞

2010年金沢市主催生活工芸プロジェクトチーフディレクター

アートに強い憧れはある。尊敬する作家はみんな、周りを圧倒する力を持つ。それが私にはない。人の目が気になったり、周りと同じであることを好む、平凡な日本人である。平和ボケのこの国に生まれて育った私には、何の哲学も持ち合わせなく、ただ足掻くばかり。ただ私が作る小さなコップが誰かの幸せの役に立っているのであれば、これをアートとよんでもいいのではないかと最近やっと思えてきた。

三谷龍二

1952 福井市生まれ これといって特徴のない街で、これといって特徴のない少年期を過ごす

1971 芝居のポスターを作ってみないかと誘われて劇団に入る  人前に立つなど考えられなかったのに、ほんの弾みで舞台にも立つ  この時同時に経験した大道具が、木に関わる始まりだった

1981 松本市に工房PERSONA STUDIOを開設 といっても団地の6畳一間  ここでできる事から始めよう、と木のアクセサリーを作りはじめる

1983 家具を作る友人に刺激をうけ、暮らしに関わるもの作りを考える  そうした中からバターケースや木の匙、そして陶磁器のように「普段に使える食器」として、木の器を作り始める

1985 クラフトフェアまつもとを友人たちと始め、以後運営に携わる この時ポスターを作ることがきっかけで、彫像作品の制作を始める(どうも妙にポスターに縁がある)

1988 同じく印刷物のために絵を描きはじめる

1995 ブローチなど観光地向けの仕事に区切りをつけ、器を製作の中心にする また、クラフトフェアの機関誌「MANO」(手)を刊行。編集長を2004年まで続ける

1996 食器に適した仕上げとしてオイルフィニッシュに加え、漆を始める

1998 神代楡、チークなど、桜以外に樹種を増して制作し始める

2001 器づくりの合間に、道具や器をモチーフにした立体や平面作品を作り始める

2003 季刊誌「住む」で絵と文による「僕の生活散歩」の連載開始

2004『素と形』展(松本市美術館)の企画に参加

2005初めての本