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鯉江良二 白磁シリーズ

鯉江良二展

2009
3月14日(土)〜3月29日(日)
11:00〜18:00

作家在廊日:3月14日(土)

対談 「焼きものアレコレ」
鯉江良二 伊藤慶二 岩島利幸 正村美里
日時:3月14日(土) 17:00より
場所:百草  入場無料


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唸る腕 吠える身体

 仕事柄、作家やその卵たちに出会うことが多い。作家になることを諦めたという話を聞く度、芸術家の才能とはどういうものだろうかと考える。器用で上手、成績優秀の者が芸術家になるとは限らないし、好きなだけでは続かない。私の知る限り、普通の人が気付かないことに気付き、それを溜め込んで溢れだしたものを表現している人が芸術家になっていることが多い。「伝えたいことがあるのだな、この人には」と思えるオーラが出ているのだ。それは個性の表現というようなものではなく、社会の一員でありながら、社会に対する違和感が積もりに積もって力となったものである。アートはギリシャ語のテクネが語源で「自然の配置・技術・資格・才能」という意味だそうだが、だからといってアーティストは技術者(テクニシャン)を指すわけでなく、伝えたいことを表現する技術の持ち主という意味であると解釈している。鯉江さんからは湧き出る泉の如く、「伝えきれていない何か」をいつも感じるのである。

 常滑を出て岐阜方面の山奥に仕事場を移して20年近くが経つ鯉江さんの口から、いつも常滑の話が出てくる。「常滑は下半身陶器の街だから・・・」とは、衛生陶器とか土管を作っている産地という意味らしいが、そんな自嘲的な言葉にも土地への愛情と同時に、常滑という産地を客観的に見つめる冷静な目も感じる。小学校5年生でアルバイトを始め、安い大物をがんがん作っていた少年時代からの記憶が、あの豪快な作品群の根底にあり今に繋がっていることは間違いないだろう。
 それは中世の時代から庶民の焼き物文化の根底を支えてきた土地の気風である。常滑は室町・安土桃山・江戸を通じて茶陶として取り上げられたことがほとんどなく、単価の安いものを製産してきた。美濃も瀬戸の日陰だったので同じような境遇であったのだが、それぞれブランド産地にはなれず、だからこそそこに溜め込まれたエネルギーの放出量は戦後とても多かった。土地の持つ負の波に耐えながらも公募展などで受賞を重ね個としてのブランド化を図った作家が多い中、鯉江さんはその波に抗いつつ、逆に風を煽って大波にして力にしてきた人である。
 鯉江さんが若い時、ろくろの削りが下手だと散々言われたそうだ。焼き物はこうでなければとか、作家はどうあるべきかなどと他人に説かれると、鯉江さんの中に渦巻く風が竜巻となって反対の方向に吹き、それとは違うものが出てくる。焼き物の世界はそんなに狭くないことを、子供の時から山を発掘した経験から肌で御存知なのである。’80年代に私が衝撃を受けた衛生陶器と同じ土で制作した白磁のシリーズも、土の上下の価値を否定したものだろう。20世紀に細分化され窮屈になった芸術に、机から離れろ、スタジオから出ろ、もっと身体を使って土と火を感じろと仰っているような気がする。
 一見奇抜な鯉江作品だが、決して奇をてらったものではなく、それぞれの土地の粘土や昔使われていた技術がベースとなり、現代において身体性を呼び覚ます必然を感じる。今展では、2006年にアメリカで制作された未発表の作品群と、新しく白磁のシリーズを展開していただけるようお願いをした。土と身体が本来持つ、大らかな可能性と思考を感じていただけたらと思う。
                 百草 安藤雅信

鯉江良二
1938
1953
愛知県常滑に生まれる
土管素地製造所のアルバイト中に右手中指と薬指の第一関節を失う
1957

タイルブロック会社に勤務
常滑高校窯業科卒業

1962

現代日本陶芸展入賞(課題作品)
常滑市立陶芸研究所に転職

1963
1966
1971

朝日陶芸展入賞
陶芸研究所退職自立
常滑造形集団、結成参加
東京・京都国立近代美術館にて「現代の陶芸、アメリカ、カナダ、メキシコと日本展」に招待出品
日本陶芸展前衛の部に入選

1972

第30回「ファエンツァ国際陶芸展」出品、薪窯を築く(天竺)
第3回「バロリス国際陶芸ビエンナレ展」国際名誉大賞受賞
金子潤と「土まつり」企画参加

1975 野やき「天竺」をコーチ
常滑陶芸作家協会脱退
1980

バトルロイヤル展(美濃)

1981
1984
「MINO」展出品
現代美術の動向Part?70年代以後の現代美術(東京都美術館)
1986 今日の造形「土と炎」展(岐阜県立美術館)
「日本の前衛」1910-1970(パリ・ポンピド=センター)
1989

設楽の金子潤氏のアトリエへ移転(愛知県北設楽郡)
愛知県立芸術大学助教授就任

1990

韓国にて制作 トータルギャラリー(SEOUL)にて個展
岐阜県立美術館「アパルトヘイトに反対する美術展」出品
東京都美術館「現代の土」招待出品

1991

イギリス ウエルズ アベリツワスにてインターナショナル・セラミック・フェスティバルに招待参加 現地制作
ベッソンギャラリーにて個展

1992

ギャラリーKOYANAGIにてクラウディ・カサノバスと二人展(東京)
愛知県立芸術大学教授就任

1993

スペインジロナ ガレリアカラマニーにてクラウディ・カサノバスと二人展
日本陶磁協会賞授賞

1994

岐阜県恵那郡上矢作へ工房を移す
高知県宿毛市沖の島にて「OKI 1994 IAI」に参加
講談社(第一出版センター)より「鯉江良二作品集」を出版

1996

岐阜県美術館にて鯉江良二展

鯉江良二 アメリカ手花入
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