ギャルリももぐさ/百草
作品/百草
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伊藤慶二 面(つら)'08

伊藤慶二展

2008
8月2日(土)〜8月17日(日) (会期中無休)
11:00〜18:00

作家在廊日:8月2日(土)・3日(日)

対談

伊藤慶二  正村美里(岐阜県美術館)

日時:8月2日(土)  17:00〜18:00

場所:百草

光の源流

 ある美術評論家が、「これからは美術の世界も、ポップスなどの音楽界のように若年齢化して消費されていくよ。・・・」と気になることを言っていた。アメリカ型の商業主義経済が、日本の美術界にも浸食してきたということだろう。見方を変えれば、美術の存在価値への問いが、商業の世界で生き残りをかけて行われているということである。その分芸術性は希薄になっていくと言われるが、芸術的な大儀はもう現代では必要ないのかもしれない。個人的な価値観の共有を求めていくのが現代芸術の傾向になりつつある中で、商業との距離をどのようにとるかが今後の課題となる。
 
うまくいけば芸術作品、下手をすればゴミというのが、芸術的な行為の宿命である。時代感覚を取り入れつつもそれ以上のものを表現し、消費されながらもそれを乗り越えて生き延びていくのが真のアーティストだ。また市井の民が気付かずにいることを、角度をつけてあぶり出し、切り取ることを芸術的行為と言う。その角度が浅いと「平凡」というレッテルを貼られ、深過ぎると生きている間に理解されることを諦めなければならない。商業は芸術の後を常に追い、あぶり出されたものを模倣し、ローラーでならしながら付けられた角度を平らにすることで消費していく。
 このような商業と芸術の駆けっこは昔からあったことで、意を決した駆けっこが、芭蕉の「奥の細道」であり、モネの「睡蓮」シリーズ、グールドの「ゴールドベルク」である。50歳前後に取り組まれたこれらの仕事に、作家の捨て身のような気迫を感じる。駆けっこはもちろんのこと、人間性・知識・技術などの円熟味までもを捨てることによって、何ものにも邪魔されずとらわれない境地に達しようとする。自由とはこの様なものだと感じる瞬間である。

 百草の柿落とし伊藤慶二展より10年、前回の尺度シリーズから6年ぶりとなる今展との間に、慶二さんの中で心境の変化が見受けられる。口数の少ない作家ではあるが、「近くなった。」と一言。推測するならば、対象と一体化して、すべてが手に届く距離になってきたということであろうか。それとも自由を得て手ぶらになり、いつでも欲しいものに手が届くようになったのであろうか。今展の「面シリーズ」は、面(おもて)という印象が強かった過去作品に比べ、面(つら)となって胴体も付き、より人間味を帯びてきている。それは生活の中で祈るように具象物を作らざるを得なかった縄文人の心境に近づいたということかもしれない。
 慶二さんと古い縄文土器やそれ以降の焼き物の歴史について話しても、同じものを見ているはずなのに、いつもハッとさせられる。見ることは何も見ていないに等しいとさえ思えてしまう。角度を付けてあぶりだすとはいうものの、四次元的な角度が付いていれば、我々凡人にはどこから光が当てられているかを探すのは無理であろう。追いかけても追いかけても、慶二さんの光の源流を見つけることができない。

 商業主義的芸術界が若い感性によって活性化され、それと同時に消費されていくのは、もはや避けられないことであろう。しかし、芸術活動の中に別次元の世界があることは知って欲しい。先輩たちが長い歴史の中で得てきた本物の自由を目標に置くことで、駆けっこしながらの芸術行為は自ずと高みに導かれていく。今回の伊藤慶二展では作品が置かれた配置と空間、少しの言葉のやり取りなどの中で、心の自由さを感じていただければと思う。

安藤雅信
伊藤慶二 茶人づら あん(庵)'08
伊藤慶二
1935
1958
1960
1978
1979
1981
2006
2007
岐阜県土岐市生まれ
武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)油画科卒業
日根野作三氏に師事
世界クラフト会議 日本クラフトコンペ受賞
'79日本クラフト展 受賞
39'ファエンツア国際陶芸展受賞
岐阜県芸術文化顕彰
第4回円空賞受賞
主な個展
1976
1978
1983
1995
青山グリーンギャラリー/東京
青山グリーンギャラリー/東京
Braunstein Gallery/サンフランシスコ
Hetjens美術館、デュッセルドルフ・ドイツ
ギャラリーBOWING/ハノーヴァー
ドイツ/美術装飾美術館、ローザンヌ、フランスを巡回
1998
1999
2001
2002

2003
2006

2007

「1965−1998」ギャルリももぐさ/多治見・岐阜
「HIROSHIMA Series」ギャルリももぐさ/多治見・岐阜
正観堂、京都
ARTSITES Gallery /ニューヨーク
「尺度シリーズ」ギャルリももぐさ/多治見・岐阜
ギャラリー4CATS/名古屋・愛知
「伊藤慶二 うつわ展」ギャラリー4CATS/
名古屋・愛知
ギャラリー数寄/名古屋・愛知
陶・伊藤慶二「うつわ」展「壺の内側を観る眼」壷中楽/鹿児島
なかむらギャラリー/久留米・福岡
主なグループ展・ワークショップなど
1980

1981
MINO展(多治見市文化会館)企画・出展
※以降88年の第9回まで
パドヴァ国際現代美術展(パドヴァ/イタリア)
「CLAYWORK'81」企画出展(
ギャラリーマロニエ/京都)
1982
1984
1985
1987
現代日本陶芸展(イタリア)日米ART&CRAFT展(金沢/石川)
国際陶芸展−CERAMICS×27(ブダペスト)
陶芸展−Pacific Connections(アメリカ)
シリーズ土一華麗なる変身(ギャラリー白)
1992 陶一空間の磁場(名古屋市民ギャラリー、愛知)
現代日本の陶芸−継続と変形(エヴァーソン美術館/ニューヨーク)
1993 現代日本の陶芸アメリカコレクション(ジャパンソサエティギャラリー/ニューヨーク)
1994
1995
1996
1997

1998
滋賀県立陶芸の森招聘講師
ファエンツァ国際陶芸展受賞者展 企画・出展(土岐)
I.A.C.'96日本展(佐賀県美術館、佐賀)
'97TAEGU(アジア美術館、韓国)
陶磁の形11人展(ASAMA工芸館、長野)
ハワイ大学企画 EAST WEST ceramics collaboration招待 
2000

2001

国際陶芸アカデミー (IAC)展(ハノーヴァー、ドイツ)
うつわをみる(東京国立近代美術館工芸館,東京)
I.A.C.展(韓国)
The オブジェ2001(Gallery NOW、富山)
2002 新工芸精神(韓国・中国)
日本ワークショップ招待(韓国)
近代工芸−百年の歴史(東京国立近代美術館工芸館/東京)
日本陶芸の展開(岐阜県現代陶芸美術館/岐阜)
2004

2005
2006
「人形」(ひとがた)−風景の中の彫刻展(ギャルリももぐさ/多治見、岐阜)
現代茶の湯の道具展 月は雲間に(GALLERY le bain/東京)
素材への思い−力と可能性−展(美濃加茂市民ミュージアム、岐阜)
2007


2008

土から生まれるもの:コレクションがむすぶ生命と大地(東京オペラシティアートギャラリー、東京)
第4回円空大賞展(岐阜県美術館、岐阜)
茶の湯−内田繁と7人の工芸作家−(ギャラリー一穂堂、ニューヨーク)
aim‘08「土から生える」展

ももぐさカフェ

期間中はルヴァンのパンを使ったランチをお召し上がりいただけます。
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