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真木千秋 二重ビームで織り出す30枚 2007


蚕衣無縫 IV

2007
4月28日(土)〜5月13日(日) (会期中無休)
11:00〜18:00

真木千秋在廊日:4月28日(土)・29日(日)・30日(月・祝)

スライド上映と真木千秋さんのお話会
4月28日(土) 16:30〜17:30

インドでの織物づくりのスライドと素材についてのお話をしていただきます
緑葉を身にまとうまでの道のりを是非体験しにいらしてください

緑葉を身にまとうまで
キュレーター 石田紀佳

 ときどき、これってあれからできてきたんだ...と、布や器などの来た道のりにおもいをはせる。たとえばタッサーシルクギッチャ。真木千秋が20年前インドにはじめて行ったときに魅了され、今も使い続けている糸。茶味があり、金色にもみえる。インドの半野生の蚕(タサールサン・野蚕)からの、さなぎが蛾になってとびたったあとの繭から、ざっくりと引いた糸。タサールサンは日本でいう「お蚕さん」とは違う種類で、桑ではなくインド菩提樹などの葉を食べる。ほかに彼女が織りこむ糸には西表島からとどくブーがある。苧麻という草の茎をさいてつくる。ふわふわの棉の実からのコットン。羊の毛。お蚕の糸もある。
 植物と動物由来の糸を交ぜて織る。それらの糸は色の染まりよう、水をすい熱をためる性質も質感も違い、それが布の表情をつくるが、じつはどれもが緑の葉から生まれている。お蚕の繭は英語でmulberrysilk=桑絹といい、まさに桑の葉しか食べない虫がはいた糸であり、桑の化身のようなもの。ルーツをたどればあたりまえで、わたしたちだって葉から生まれたともいえるが、そのあたりまえこそが神秘のよう。緑の葉が小さな虫の体を通って糸になり、人の手をへてわたしたちの身をつつむ。 この美しい変化(へんげ)の技が生きる喜びで、それがひととき一枚の布となって人の前にたちあらわれる。

 かつて真木は蚕が頭をふりふり糸を吐く姿を見て、その震えが布に伝わることを興奮ぎみに話してくれた。人が手を加えて布にするのだから、蚕が吐いたままではないが、その天然のリズムを布にうつしたいのかもしれない、と自分が好む風合いのわけをみつけたようだった。彼女はいつだってピンとはった直線ではなく、ふくらみとゆれのある手紡ぎの糸をつぶさずに手で織りこむ。
もっとも、熟練すれば自動織機にもかかる「織りやすい」まっすぐな糸が紡げる。だから「慣れてなくてゆっくりしかできないわたしたちが引いた糸もなかなかいいの」とスタジオで座繰りした糸を一筋布にいれる。するとたとえ機械紡績の糸がわきにあっても布がふるえだす。真木の感受性がそこにある。

 安藤明子の二重のサロンは、くるくるまわせば好きな柄が出て遊べると同時に、同じところばかり擦れて痛みやすい裾(すそ)への配慮となっている。わたしが彼女のサロンをはじめて買ったのは、真木の布や着物地が機械織りの黒木綿にすてきに映えていたこともあったが、この心くばりにやられてしまったのだった。美しい変化の技がこの人の手にも宿っている。服をつくる人は光をあびた葉からはじまり布にいたった変幻にきわめつけの手をそえる。おそらくこの役割のある意味でのきびしさを彼女は感じていて、布にいれるハサミすくなに、すえながく多様に着られる服をつくるのだろう。

 できたものだけを評価したい、してほしいという人にとっては素材の背景なんて、うるさい御託にすぎない。けれどもじわじわとつづく美しさには、心ひかれる姿かたちには、天然のときとところがうまく流れあわさっている。手仕事でも工業製品でも同じだろう。真木千秋の布も安藤明子の衣も、天然のうまみをぐっとひきだしている。天衣無縫にむかっている。

安藤明子 とんがり型上衣 麻ウネランダム  2007
真木千秋
ほおずりしたいような大好きな糸の中に野生の繭、タッサーシルクか ら 紡ぐ「ナーシ」の糸がある。
繭のさきっぽの茶色い部分を手で紡いだ糸だ。絹なのに繊維が短くて ちりちりとした風合いなので、よりを強くかけないと糸にな らない。そのとても織りにくい糸をたて糸 にして、麻と一緒に織る方法を考えた。たて糸を2つにわけて棒に巻き取り、お互いの糸がからまらない ように織るのだ。
だから名前を2重ビームとしている。
それから17,8年過ぎたが、いまもその風合いが好きで、 ストールや反物として定番で織っている。
今回はその二重ビームで小さな絵を描くようにストールを織ってみる。 ごつごつした糸をいれてみるもの、金茶色でゆらぎのある糸をいれてみ るもの、 縮む糸をいれるもの.....。草木で染めた色を気分次第で織り込 んでみる。色も風合いも自由自在に。
ももぐさでその30枚をかざるのをとても楽しみにしている。
作家略歴
1960 武蔵野に生まれ育つ
1980 武蔵野美術短期大学工芸テキスタイル科卒業後渡米ボストン美術館付属美術学校、マサチューセッツ州立美術大学の夜間部を経てロードアイランド造形大学(RISD)に編入
1981 ヘイスタック・クラフトスクールにてファイバーアティストのSheila Hicks のアシスタントをする
1982 ロードアイランド造形大学在学中"Textile for 80th展がきっかけで桐生のテキスタイルプランナー新井淳一氏と出会う
1985 ロードアイランド造形大学卒業後ニューヨークでフリーのテキスタイルデザイナーとして働く その間中南米、東ヨーロッパなどを訪ねる
1990 東京の山里、五日市に住み着いて創作活動をはじめる
1994 沖縄西表島の染織家石垣昭子さんと出会う
1996 東京青山に真木テキスタイルスタジオをオープンする。(〜2006)
1997 石垣昭子さん真砂三千代さんと南の島発信「現代の衣」真南風プロジェクトをはじめる
1998 真南風をニューヨークで発表
2000 南アフリカ、ケープタウン のデザインスクール・Madessaで開催された「Textile Tomorrow」ワークショップにて講師
2001

百草にて安藤明子さんと蚕衣無縫展開催

2006 東京あきる野市、真木テキスタイルスタジオの敷地内に竹林shopをオープン
出展内容
真木千秋 「二重ビーム ストール」(経糸に麻とタッサーシルク、緯糸にいろいろなタッサーシルクや麻など・25cm×140cm)限定30枚
ストール・服・生活の布製品
安藤明子 真木千秋さんの布は美しい。蚕の営みが奇跡だとすれば、千秋さんのそれらの糸を操る手業もまた。その奇跡の美を「着る」形にする。その美しさや完成形を損なうことなく。直ちに「布」に立ち戻れることが条件。そうすれば布(としての美)を汚さなくてすむ。
そんな美を生活に添えるこころがハレとなる。

自分なりのハレを見つけていただけたらと、布どうしを響かせ合い形にしてみました。いつでもどこでも自由な固有の組み合わせで、自分なりのハレを楽しんでください。

ももぐさカフェ

29日(日)・30日(月)は東京都あきるの市にある真木テキスタイルスタジオのインド人スタッフRakeshが、竹林カフェメニューの中から手焼きのチャパティ(全粒粉)と野菜のサブジ(おかず)を作ってくださいます。

期間中はルヴァンのパンを使ったランチをお召し上がりいただけます。
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