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吉田喜彦 黒陶茶碗

吉田喜彦展

2007
3月17日(土)〜4月1日(日) (会期中無休)
11:00〜18:00

作家在廊日:3月17日(土)〜21日(水・祝)

菓子の茶事(飯後の茶事)

酒 八寸 菓子 濃茶 薄茶
3月18日(日)    15:00〜18:00
3月19日(月)    15:00〜18:00
3月20日(火)    15:00〜18:00
3月21日(水・祝)   15:00〜18:00

各席5名 3500円(税込・予約制)予約受付3月8日〜
吉田喜彦さんの器でお出しいたします

陶芸と焼き物
 先日、ある陶芸家と話をしていて、思ってもないことを言われて驚いた。「安藤さん、陶芸嫌いなんじゃない」。自分では好きだと思い込んでいただけに、瞬時に言葉が出てこない。「・・・。焼き物は好きなんだけど。」と答えを濁した。それからというもの、焼き物と陶芸について考えることが多くなった。
 漫画「美味しんぼ」での料理対決で、陶山先生という陶芸家が審判役を受け持っているように、日本人にとって一番自然な芸術家像は画家や彫刻家ではなく陶芸家であろう。「CHINAは陶器で、JAPANが漆器」と言われるが、それはかつての磁器の話で、陶磁器となれば世界を見回してもこれ程焼き物好きの民族は日本人しかいないし、当然のことながら作り手も多い。なんといっても現在進行形で変化し続け、焼き物の歴史に停滞期がない。日本文化の中で焼き物が担っている部分はとても多く、茶道の影響から料理・建築・華道と多義に及んでいる。それが作り手にも使い手にも複雑な感情になって表れている。特に20世紀に近代の産物として花開いた芸術の内、他の殆どの芸術が西洋のコピーであるが故、陶芸には鬱屈した反動がうんと盛り込まれた。作る側はそれが日本の独自文化となるよう必要以上のものを表現し、また観る側も伝統から前衛に至るまでそれを求めてきてしまったのではないかと思うのである。陶芸は陶の字に芸が付いたこの100年間で、焼き物という幹から枝分かれし、自己表現を目的とした一つの花であり宿命だと思われている。

 
陶芸の始まった20世紀に限らず、自己表現的な作家は昔から居た。光悦はその代表であり、最初の陶芸家的存在かもしれない。一方長次郎は陶芸家ではなく焼き物師。光悦や仁清に国宝はあっても長次郎にはない。現代において表現性の強い陶芸は評価されても、表現を抑えた焼き物はなぜ評価されにくいのであろう。
 陶芸は作品に自己を投影したり、技術やアイデアなどを盛り込み、作品が主張することを目的とするので、作品が「主」で置かれる場や使われ方は「従」となる。一方、焼き物は自己を如何に引き算するかが重要であり、使われ方や空間などが「主」となる。だから、焼き物には使い手が関わって完成する余地が残され、陶芸と違って使い手の見立てが利きやすい。陶芸と焼き物の制作上の一つの分岐点は、作り手が作品からどう離れるかである。「天才は離れ、名人は切り、凡人は過ぎる」とよく言われる。天才か凡人かは別として、どうも陶芸には「過ぎる」を喜ぶ風潮がある。それは「過ぎた」ものの方が評価しやすく、また万人も納得するからであろう。

 
だからか吉田さんの作品に接するといつもほっとする。「過ぎた」ものや無理して「切った」作品を目にしたことがない。どれも静かで控えめ、なのに内なる空間を力にして圧倒的な存在感を醸し出している。使い手とか作り手からとうに離れ、必然であるかのように存在し佇むもの。それが吉田さんの作品である。そうなれば用途すら関係なく、茶碗も多面体も立体造形のようであり、また道具でもある。飾り物でなく、自己表現でもない、このような焼き物のことを何と呼んで良いのであろうか。いつも言葉に窮するのである。
安藤雅信
吉田喜彦 作家略歴
1936 栃木県宇都宮に生まれる 幼い頃より何かを見ているのが好きで、小学校四年生の時、絵描きになると決める
1954 宇都宮大学付属中を経て、宇都宮高校卒業
日曜日に林武さんのところに通う
この前後からマチス・ピカソ・宗達・光琳等の大きな展覧会を観て、自分の絵が大したものでないことを知る
上野の博物館に通う間に、陶器、書、仏像等を熱心に観るようになり、陶器を作るなら職人的な道もあり、才能がなくても何とかなるかと考え濱田庄司先生に弟子入りを頼むも、奥様が「暫く休みたい」とのこと「どこか土づくりから何でもやっているところで暫く仕事をしてきたら」と濱田先生のお話もあった 志野も好きだし、山の中で一人で作陶しているとの第一回人間国宝展の荒川先生の紹介文に、濱田先生の話が重なり、荒川先生に弟子入りすることになる
1956 大萱での作陶修行が始まる
以後、益子や東京で濱田先生にもお会いして、作ったものをお目にかけ、蒐集品も見せて頂く
1968 大萱に家を作り独立
1969 初窯 初個展 以来数ヶ所の百貨店での個展を作品発表の場とする

1981 東京新宿区の備後屋ギャラリー華での第一回展、以後97年までに九回の個展をして、その都度作品集を刊行 この間ほとんど華だけを発表の場とし、華の俵有作さんからたくさんのことを学び、沢山の品々を観せて頂いた 誠に嬉しい歳月でした
小さいながらも、今こうして仕事を続けられるのは、有名無名の多くの良き方々とお会いできたからだと感謝しています

1988 現代日本陶芸展(アメリカ・ポートランド美術館)
イギリス・ビクトリア&アルバート美術館 粉引大壺収蔵

1989 東京国立博物館 信楽しのぎ手大板収蔵
イギリス・ビクトリア&アルバート美術館 信楽しのぎ手筒他三点収蔵

1990 ダラス美術館 粉引大壺収蔵

1992 日本の陶芸「今」百選展(NHK主催)

1995
JAPANESE STUDIO CRAFTS展(ビクトリア・アルバート美術館)
個展(壺中居・日本橋)

1997 大阪東洋陶磁美術館 三弁花形鉢収蔵

1999 個展(壺中居・日本橋)

2000 個展(東武宇都宮百貨店)
他オーストラリア・キャンベラ ナショナルギャラリー アメリカ・コカコーラ美術館等収蔵
団体に所属することなく、公募展にも出品せず今日に至る

2003 栃木県立美術館収蔵
個展(ギャルリ百草・多治見)

2005 ギャラリーTOM個展(渋谷)TOMは盲人のための美術館
個展(ギャラリー宇高・松山)

2006

個展(光原社・盛岡)、(壷中居・日本橋)、(ギャラリー aria・岐阜)等
フランス・ブルターニュのボーデュアンと出会い、作品としての本25部の共作を決め、07年5月ブルターニュのヴァンヌで二人展が決まる

ももぐさカフェ
期間中はルヴァンのパンを使ったランチをお召し上がりいただけます。
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