受け手と送り手
先日、中原中也の日誌が新たに発見された。その中に「‥・自我をふりかざす近代文学は、絶えず山登りでもしてゐるやうに熱っぽいものでございますので、それがイヤになり・‥」というフレーズがあった。この文学という文字を芸術に変えても同じで、明治時代に近代芸術が輸入されてから、どうも日本の文化の在り方が大きく変わってしまったようだ。芸術はゼロから苦悩しながら 創造し、構築していくものというイメージが根付いている。これを送り手の文化とするなら、日本人が得意としていた受け手の文化というものがある。幅の広い文化であるが、そのうちの一つに「見立て」使いがあり、表装のような演出も含まれる。千利休が完成させた茶道の多くは、受け手の文化で成り立っている。
坂田さんがされている仕事は、受け手の文化の素晴らしい継承だと思う。坂田さんに拾い出された物がお店に並ぶと、道具としての本来の用途から離れて別の姿を見せ、生き生きとして実に楽しそうである。これは「美を発見する」とても創造的な仕事であり、手で作り出すものではないが、「眼の仕事」として学ぶべきことが多い。 作家である送り手の文化人とこの受け手の文化人は同列だと私は捉えている。選ばれた道具たちが、百草という空間でどんな楽しい表情をみせて呉れるか、どうぞ御期待願いたい。 |
ギャルリももぐさ 安藤雅信 |
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小土器 ヨルダンBC25〜30C |
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坂田和實 略歴 |
1945 |
福岡県北九州市生まれ |
1973 |
古道具板田設立開店 |
1994 |
美術舘 as it is 設立開舘 |
企画展覧会 |
1977 |
アフリカの古民具展 |
1978 |
Primitive Art 展 |
1980 |
望月通陽染布展 |
1981 |
英国のスリップウェアー展 |
1983 |
望月通陽展 李朝木工小品展 |
1985 |
中国彩文士器展 李朝の民画展 |
1988 |
アフリカ・ドゴン族のはしご展 |
1989 |
西洋木版古カルタ展 アフリカのフォルム展 |
1990 |
西洋の中世・近世工芸展 エジプト コプト裂展 |
1991 |
ドゴン族の扉と日本の土器展 |
1992 |
日本の野良着・仕事着展 |
1993 |
古い金属の造形展 |
1994 |
西アフリカの土偶展 |
1995 |
西洋銅板手彩色プリント展 |
1996 |
マダカスカルの木彫とピグミー族のタパ展 |
1997 |
オランダ白釉陶器展 |
1998 |
李朝の鉢と碗展 |
2000 |
李朝の平瓦と懸け花展 |
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