ギャルリももぐさ/百草
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柴田節郎展 クラフトとオブジェ 1965〜 2000 1月15日(土)〜1月30日(日)
点 と 線
 地方を走る幹線以外のJR線のことをローカル線という。しかし、たとえ僻地のローカル線と言っても、乗り継ぎを繰り返せば必ず都心に出られる。つまり、全国繋がっているわけである。僕が最近気にしているのは、そのような都会志向や繋がりを積極的に持たず、ローカルな「点」として存在する作家たちである。この点の一つが柴田節郎さんである。
 何故そのような「点」が気になるのかと言えば、自分から路線に乗り、乗り遅れまいと時刻表を気にしている作家が多い中、「点」のまま在り続けることはとても難しいからである。
 石を投げれば自称「陶芸家」に当たると言われる美濃で、点のまま在り続けようとする意志を節郎さんが持ち続ける根拠となったのは、日根野作三との出会いであった。日根野さんは国の仕事で、四○年前に美濃地方に配属されたデザイン指導者である。その当時、全国に実力のある指導者が派遣された。同僚が出世していくなか、最後まで在野で指導を続けられた。その指導は、目の前にある物や形に惑わされず、常に本質を見て考えろというものであったらしい。戦前からのクラフト運動を通して、この地にもクラフトマンシップを持ち込んだ。鮮度の高いイメージを先行させ、技術と素材で裏付けする。綺麗な花を咲かせるには、根っこから考えて作ればいいということだろう。独自性や感性を重視した指導の成果がその後、美濃焼に定着したとは正直思えないが、伊藤慶二さんや柴田節郎さんなど個人の中には今でも引き続き受け継がれていると思う。
 節郎さんが影響を受けたもう一人は、十八才の時に出会い、話をする機会を得た走泥社の八木一夫である。京都に発した八木さんの走泥社の動きは、今の我々も恩恵を受けていると思う。焼き物の社会性と可能性の無限さを、当時知らしめてくれた。後の作家がそれらを受け継がず、個性の表現に走ってしまったのとは違い、節郎さんは八木さんに出会った時の衝撃を今でも大事にされていると感じられる。いつまでも瑞々しく、大らかで奔放である。
 節郎さんは後継者の育成にも熱心である。一人でぽつんと活動してきた作家の発表の場を、色々な形で作ってこられた。「点」が増えることを願ってのことだろう。若い時受けた強い衝撃は思いとして個人の中に蓄積され、「点」として存在し続けられる力となる。歴史の惰性で焼き物をやっている美濃の中で、節郎さんの食器とオブジェを一同に展示することは、気概を展示することに等しいと思う。楽しみである。  
ギャルリ百草 安藤雅信
柴田節郎 作家略歴
1940 岐阜県多治見市生まれ
1956 西寺鉄舟氏に油絵を師事「絵を描く心を知り、この時の教えが今の物作りの中に根付いた」
1957 県立多治見工業高等学校図案科卒
土岐市立陶磁器試験場入所 日根野作三氏に以後15年間陶芸のイロハから学ぶ
1958 八木一夫氏に出合う「社会性を持った陶芸界を知る」
1962 全国陶磁器デザインコンペティション通産局長賞
日本陶磁器意匠センター賞
1965 2人展[前衛オブジェ](多治見’73)「美濃陶芸界で初めてのオブジェ展を開催」
第1回美濃陶芸協会記者クラブ賞 その後美濃陶芸協会脱会「親分子分の世界はいらない」
1966 陶磁器試験場退職 
河島工房(京都)にて研修
1969 多治見市に陶房を開窯
1970 丸栄個展(名古屋’71)美濃・常滑・京都・丹波[クラフト](京都)
美濃グルッペ泥人[クラフト](仙台・東京・名古屋・多治見〜’85)「苦しい時もあったが、楽しい会であった」
1973 2人展[前衛オブジェ](名古屋・安里SIX)
1974 フイエンツア国際陶芸交流展出品(イタリア’82)
1980 MINOバトルロイヤル野外展(多治見)「現代アートの野人が一同に会した」
1981 MINO展(多治見・土岐・金沢・福岡・粛都・名古屋 〜’88以後毎回企画参加出品)
1982 中日展立体部門出品(’83・’84)「陶について行きづまり、木の仕事を取り入れた」
1988 MINO女性陶芸家交流展(多治見)「これを最後にMINO展を解散」あかりのオブジェ大常展入賞(岐阜)
1989 MINO五人展[陶・鉄・石](’92・’95・’98)「格調の高いグループ展」
1990 土と炎と俊太郎と(多治見)
個展(イケダヤ画廊東京’91)「初めての東京展ではあったが、自分だけの満足感で終わった」
1992 国際陶磁器フェスティバル美濃出展(多治見)
1993 絵・陶 二人展(多治見・稲沢・刈谷’94・’95)
胸の中を覗いて見たい人たち展[炎舞](名古屋)
1995  個展(CAST IRON GALLERY ニューヨーク)
個展(ギャラリーうつわ多治見’96)
1996 現代アート“ニューヨーグ’国際カケジク展INタジミ「前の年の米国個展の遺産」ロンドン展(イギリス)「英国と多治見の知的障害者の交流が出来て良かった」
1997 現代アート“ざノこんりゅう”展(土岐’97・多治見’99)「企画を立てる面白さを知る」ユーモア陶彫展[招待コンペ優秀貰](土岐)
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