百草開廊の御挨拶 |
名古屋市鳴海から民家を移築し、この度ギャルリももぐさを始めることにしました。消費社会から離れて、「もの」と人とのかかわりを新しい世紀に向かって考え直したいというのが開廊の動機です。着る・食べる・住むという生活の基本から見つめた美術・工芸の在り方を、企画展と常設で御紹介していきたいと考えております。芸術にしろ工芸にしろ、広義においてそれらは『道具』であり、作る側だけでなく使う側も今一度その存在の動機を確認する必要があると思います。そうすれば、作る側と使う側にもっと密接な感情のやりとりが生まれ、消費社会を問い直すきっかけができる筈です。
100年前の民家を展示場所に選んだのは、そういった密接な感情のやりとりにより具体的な場が必要だと感じたからです。ギャラリーという特別な空間を作らず、土間・板の間・畳の部屋・縁側・床の間などの生活空間を使って展示を致します。また、長年日本人が培って来た文化をもう一度手繰り寄せ、糸口を失った現代と結び直したいとも思います。床の間や茶室を代表とする空間美意識を現代の中で忘れつつあることは余りにも残念でありますし、古民家が持つ凛とした空気は美しさや醜さを超越し、忙しさの中で惰性に流されがちな生活に張りを与えてくれることでしょう。
『生活』をキーワードにゆっくりと成長していけることを願っております。百草(ももぐさ・松の異称)の名にちなんで末永いお付き合いの程、宜しくお願い申し上げます。 また、開廊記念展として『伊藤慶二展1965〜1998』を催します。氏は私の最も尊敬する作家であり、美濃で芸術家と呼べる数少ない作家の内の一人です。私が今一番観たい展覧会です。40年近い作家歴を通して、一貫して新しさと深さとユーモアを表現してこられた氏の全貌を通して、精神の引き継ぎをここで出来ればと思います。
’98年10月吉日 |
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ギャルリももぐさ 安藤雅信 |
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