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百草20執念記念企画 伊藤慶展展

二〇一八年一〇月二〇日(土)- 十一月十二日(月)(好評につき会期延長)
十一時 - 十八時 十一月六日・七日のみ休廊
在廊日: 十月二〇日・二一日

DM

20th Anniversary Exhibition
Keiji Ito

2018. 10. 20 sat — 11. 12 mon

伊藤慶二
プロフィール

1935 岐阜県土岐市生

受賞歴
1978 世界クラフト会議・日本クラフトコンペ美術出版社賞
1979 ’79日本クラフト展・優秀賞
1981 39ファエンツア国際陶芸展(イタリア)
1989 美濃陶芸作品永年保存
2006 岐阜県芸術文化顕彰
2007 円空大賞展 円空賞
2013 地域文化芸術功労表彰(文科省)
2017 薬師寺 平成の至宝 83選奉納
平成28年度 日本陶磁協会 金賞

パブリックコレクション(国内)
東京国立近代美術館工芸館
京都国立近代美術館
岐阜県美術館
岐阜県現代陶芸美術館
多治見美濃陶芸ミュージアム
陶芸の森(信楽)
パラミタミュージアム(三重)
楽翠亭美術館(富山)
東京オペラシティ アートギャラリー
菊地智美術館(東京)
愛知陶磁美術館
モザイクタイルミュージアム(多治見)
とうしん美濃陶芸美術館

百草での展覧会など
〈個展〉
1998 10月 「伊藤慶二展 1965–1998」
一九九九 8月 「伊藤慶二展|ヒロシマシリーズ」
1999 10月 「開廊一周年記念 食のうつわ展」
2002 10月 「伊藤慶二展|尺度シリーズ」
2002 8月 「伊藤慶二展|つら・づら」
〈グループ展など〉
2000,2001 スタジオMAVOにて、ワークショップ
2001—12 干支香合を制作 2001 7月 「写しの美学」
2004 11月 「人形ひとがた—風景の中の彫刻展」
2005 7月 「夏のお茶展」
2006 12月 「山田節子が選ぶ 器量ある7人の仕事」
2008 aim ’08「土から生える」展
(国際陶磁器フェスティバル美濃 aim ’08 実行委員会)
2013 9月「お茶の愉しみ お酒の悦び」

一九三五 岐阜県土岐市生

受賞歴
一九七八 世界クラフト会議・日本クラフトコンペ美術出版社賞
一九七九 ’79日本クラフト展・優秀賞
一九八一 39ファエンツア国際陶芸展(イタリア)
一九八九 美濃陶芸作品永年保存
二〇〇六 岐阜県芸術文化顕彰
二〇〇七 円空大賞展 円空賞
二〇一三 地域文化芸術功労表彰(文科省)
二〇一七 薬師寺 平成の至宝 83選奉納
平成28年度 日本陶磁協会 金賞

パブリックコレクション(国内)
東京国立近代美術館工芸館
京都国立近代美術館
岐阜県美術館
岐阜県現代陶芸美術館
多治見美濃陶芸ミュージアム
陶芸の森(信楽)
パラミタミュージアム(三重)
楽翠亭美術館(富山)
東京オペラシティ アートギャラリー
菊地智美術館(東京)
愛知陶磁美術館
モザイクタイルミュージアム(多治見)
とうしん美濃陶芸美術館

百草での展覧会など
〈個展〉
一九九八 10月 「伊藤慶二展 1965–1998」
一九九九 8月 「伊藤慶二展|ヒロシマシリーズ」
一九九九 10月 「開廊一周年記念 食のうつわ展」
二〇〇二 10月 「伊藤慶二展|尺度シリーズ」
二〇〇二 8月 「伊藤慶二展|つら・づら」
〈グループ展など〉
二〇〇〇、一 スタジオMAVOにて、ワークショップ
二〇〇一-一二 干支香合を制作 二〇〇一 7月 「写しの美学」
二〇〇四 11月 「人形ひとがた—風景の中の彫刻展」
二〇〇五 7月 「夏のお茶展」
二〇〇六 12月 「山田節子が選ぶ 器量ある7人の仕事」
二〇〇八 aim ’08「土から生える」展
(国際陶磁器フェスティバル美濃 aim ’08 実行委員会)
二〇一三 9月「お茶の愉しみ お酒の悦び」

伊藤慶二と百草
土田眞紀 同志社大学講師・美術史

一九九八年の開廊記念展以来、百草での伊藤慶二展は今回で五回目になる。ちょうど十年前に開かれた前回の「つら・づら」展の際、いちばん奥の座敷に人や動物を連想させる頭部のみの作品が十点ほど並んでいた。その一つ一つに見え隠れする相貌や表情を飽かず眺めているうちに、これらは土による素描(スケッチ)なのではないかと気づいた。素描において、筆やペンや鉛筆が画家の手の動きをそのまま伝え、その先に生まれる一本の線がときに見覚えのある形を、ときに予期せぬ形を浮かび上がらせる。同じように土に触れる伊藤さんの指先や手にした道具から生まれた凹凸は見る者の記憶と想像力にはたらきかけ、意味を帯びた形が浮かんではまた消える。線に導かれて白紙から形が現れるその瞬間に立ち会っているような喜びをこのとき作品から味わうことができた。
私の思い違いでなければ、この「つら・づら」展の頃から伊藤さんの作品にはより具象的な表現が増えていったように思うが、近作のなかには具象的というより絵画的と呼びたい作品が何点かある。絵画的とはいっても、伊藤さんの場合は平面的な絵や模様が表現されているということではなく、あくまでも土による立体的な造形のうちに画家としての目のはたらきを強く感じるという意味である。この画家の目は伊藤さん本来のものであると思うが、同時に伊藤さんには陶工の目も彫刻家の目も建築家の目も思索者の目も備わっている。そのなかで画家の目が封印されてきたというわけではないが、以前は他の背後に隠れがちであったように感じる。土を主な造形の手段として選んだ時点で自ずとそうなっていったのだろうと推測する。
かつて富本憲吉は、自身が一人の陶工として「あまりにも絵画的分子を持ち過ぎる」のではないかと自問した。大正時代にほぼ独学で陶器づくりの道に入り、この分野で個人作家の草分けとなった富本は、長い時間をかけてその「絵画的分子」を陶磁器のうちに昇華させて羊歯文や四弁花文をはじめとする独創的な「模様」を生み出した。同時に立体的な造形として形と質感を突きつめた白磁もまた富本の手から生まれている。彼もやはり陶工であるだけでなく、画家、彫刻家、建築家、思索者、そのすべての目を持ち合わせた人であったと思われ、その点では何よりも彫刻家の目の持ち主であった高村光太郎などとは違っていた。
土と火を相手とする領域において「絵画的分子」を昇華するには富本をもってしても一定の年月が必要だった。その点は伊藤さんも同じであるように思われる。ただ両者が生きる時代には数十年のずれがあり、大正半ば以降の富本は、初期の多彩な活動を捨てて陶器づくりに専念する一方で、なお陶器だけでは表現し切れないものをかなりの数にのぼる画巻や画帖など絵の仕事として残した。対するに伊藤さんの表現の領域は、器、茶碗、オブジェに留まらず、陶以外の素材や手法も含めて年を追うごとに広がり、現在はそれらの間を自在に行き来している。その広がりのうちにはジャンルや素材、手法の境界を越えて、土の手触りも、素描の線も彫刻の丸みも、張りめぐらされた空間の気配も、深い智恵や死者の声も内包されている。何ものにも捕らわれることなく、それらすべてが訪れた人に届けられる場であること。それが二十年経ったいまも百草にとっての変わらぬ願いではないだろうか。

変わるものと変わらないもの
百草 安藤雅信

百草をオープンしてからの二〇年は、コンピューターやスマホの普及で大きく変わった社会の転換期でもあった。工芸や美術の世界も変化し、二〇世紀の終わりとともに上流社会への憧れもほぼ消え、新しい世紀はフラットになって進み始めたように思う。これからは情報を横に共有しながら、何を守り伝えていくか、諸問題にどう対処していくか、人々が知恵を出し合っていくことが大事になっていくだろう。この変動の時代に二〇年続けてこられたことの意味をかみしめ、こけら落としの個展をして頂いた伊藤慶二さんに、また節目の展覧会を御願いした。
慶二さんとの出会いは、僕が作家として駆け出しだった三〇年以上前に、陶立体のグループ展にお誘い頂いた時から始まった。その後十年ほど経って制作に行き詰まっていた頃、慶二さんの食器に偶然出会い、道が開けたことで百草を通したお付き合いを御願いするようになった。何故食器との出会いで開眼したかといえば、焼物という総合文化の中で、器や陶立体を分け隔てなく作ることを、高いレベルで実現されていたからである。
技術力やアイデアに拘泥しがちな工芸作品が多い中、慶二さんの食器などの道具類や陶立体は、機能の有無にかかわらず存在の必然性と空気感を持ち、工芸の中に収まっていない。それは焼物の過去の価値観に頼り過ぎず、切実な動機と理念を持って古い道具や美術を自分の眼で深く思考し、焼物制作に転換してきた個を持つモダニストであるから成し得たことである。
二〇年前の百草のこけら落としの展覧会では、半ば回顧展のように過去の食器から陶立体までを全館使って展示させて頂いた。多くの鑑賞者から驚きの言葉を頂き、その後の若手作家に向けての数回のワークショップなどと共に、慶二さんのものつくり魂はこの地で引き継がれていった。特にワークショップは慶二さんが培ってこられた技術や考え方を、惜しげもなく若き世代に伝えて頂き、多くの作家が育っていったことは記憶に新しい。
僕は作家として慶二さんの足下にも及ばないが、その最も遠い地点は、流行に左右されず、御自分の世界観をどんどん掘り下げられていることである。戦後、美濃・瀬戸・常滑・萬古などでデザイン指導されてこられた日根野作三の愛弟子ともいえる慶二さんが、今展では御自分が影響を受けてこられたものを絵巻として出された。好きなものに囲まれ、好きなものを作っていく。シンプルな動機のように見えるが、ぶれない姿勢と深い観察によって築かれてきたものだと思う。ものつくり魂を再度確認し、慶二さんの今の関心を、皆さんと共に楽しみたい。

「伊藤慶二を繋ぐ」
リレートーク

十月二一日 (日) 十四時から 百草にて 参加自由

伊藤慶二さんに多角的に光を当て、その魅力を解き明かすべく、
慶二さんを取り巻く、それぞれ専門分野で慶二さんをよく識り、ファンであり理解者でいらっしゃる皆様に、順番にご登壇頂きお話を伺います。
是非、幅広い世代・立場の方々にお聴き頂きたいと思います。特に次代を担う方々へ繋いでゆくメッセージとなることを願います。

山田節子 コーディネーター
正村美里 岐阜県美術館 副館長兼学芸部長
土田眞紀 同志社大学講師 美術史
小島久弥 現代美術作家 デザイナー ギャラリスト
内田鋼一 陶芸家 BANKO archive design museum 館長

ご紹介: 伊藤慶二
進行: 安藤雅信