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日本の音楽夜話 5 中山康樹

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ああ、また信頼の出来る物書きが、黄泉の国に旅立たれてしまった。62歳。早すぎる死である。昨年の7月8日のブログに書いたように、ジャズとかロックとかのカテゴリーを横断して、ズバッと書いてくれる稀有な人だった。ちょっと前のジャズは、クラシックに対応するために教養主義的なところがあったが、中山さんの文章は、僕の耳に直接響く言葉で迫ってきた。

音楽の聴き方も色々あるだろう。過去に楽器を触ってことがある人とない人では、当然聴き方も異なってくる。中山さんは強いて言えば、スタジオの録音に立ち会っていたかのような文章。プロデューサーの役割や、その時にミュージシャンの動きや交流を教えてくれる。演奏に興味がある人には、知りたい情報を教えてくれ、かつ、歴史の捉え方も俯瞰的で説得力があった。マイルスのファン層を広げ、評価の低かった ’70年代以降のエレクトリックマイルスの評価した仕事は立派だった。ご冥福を祈ります。

 

 

 

日本の音楽夜話 4  Eテレ(教育テレビ)1

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NHKはメインストリーム、民放はサブカルチャーという図式が崩れたのはいつ頃だろう。Eテレと名乗る前は教育テレビと呼ばれていたが、僕がよく見るようになったのは1996年、グッチ裕三が出ていた「ハッチポッチステーション」から。子供番組の体裁はとっていても、制作している大人が楽しんでいるとしか思えない素晴らしいサブカルチャー番組だった。一番楽しみにしていたのは「What’s entertainment?」。童謡をビートルズやクイーン、マイケル・ジャクソンの曲をパロディにして歌うコーナー。(ユーチューブに何曲かアップされているので、一見の価値あり)これを観て育った子どもは今、どんな成人になろうとしているだろう。子どもには難しすぎたかな。Eテレには是非、続編をお願いしたい。日曜美術館をパロディー化した「日用品美術館」というコーナーもあった。このタイトル、いただき!

そんな中、2010年からEテレで始まった「音楽の学校 スコラ」は、音楽を様々な角度で、坂本龍一がゲストと共に解体し、説明してくれる好番組である。不定期ゆえ、見逃したシリーズもあるが、書籍とCDまたはDVDとして30巻の予定で販売が始まっている。これは8,295円と高いのが難点。クラシックからロックまでカテゴリーを越えて幅広く、これからも楽しみな番組。

この巻はイエローマジックオーケストラの三人の対談に、中村とうよう亡き後、僕が最も信頼を寄せるピーター・バラカンが加わって、影響を受けた音楽について語っている。ブラックミュージックが多く、YMOとは思えない選曲に驚いた。

日本の音楽夜話 3 ファンク

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日本のファンクの歴史を誰か研究しているのかなあ。歴史と言えるようなものもないのかな。一節によると、最初にチョッパーベース(スラップ奏法)を弾いたのは後藤次利とか。はっぴーえんど解散後、ベースの細野晴臣とギターの鈴木茂が残り、そこにキーボードに松任谷正隆、ドラムに林立夫を加えて「ティンパンアレー」が1973年に始まった。本来ベースは細野晴臣だが、チョッパーズ・ブギでは後藤次利がベースを弾いている。75年に出たアルバムに収録されているから、これが最初かも。この頃、ギターの鈴木茂は自分のバンドを持っていて、ロスアンジェルスでリトルフィートを迎えて録音している。この中にファンクのリズムを取り入れた曲が二つある。「スノー・エキスプレス」と「グレート・アメリカン・ファンキーガール」。後者の曲は全員日本人。チョッパーズ・ブギよりこちらの方が、ファンク的な躍動感があり好みである。ロック日本語論争があり、日本語のロックが市民権を得ようとしていたが、’70年代はまだまだ、音楽的には英米の影響下にあった。しかし、彼らに影響を与えたものの引き出しのセンスが抜群に良かったことは間違いない。

FUNKの周辺 6  ファンクビート初体験

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この2枚を聴いたのは、1974年高校2年の時。秋だった。両方とも友人から借りてカセットに録音した。英語の単語はどんどん忘れていくのに、役に立たないこんな事は40年後の今でも良く覚えている。秋の修学旅行で出来るだけお金を使わないように帰り、急いで輸入盤で次作の「スラスト」(突撃)とチック・コリアの「銀河の輝映」を買った。国内盤2500円、輸入盤1800円。高かった。

スティービー・ワンダーの「迷信」のキーボードが奏でるリズムは衝撃的だったが、アルバム全曲そのノリではなかったので、たまたま黒人っぽいビートの曲を入れたんだという認識だった。もちろん、当時、ファンクなんて言葉は知らなかったし、このアルバムはソウル部門に置かれてた。ソウル・ロック・フォーク・ジャズというジャンルしかなく、ジャズの中にクロスオーバーという小さなジャンルが存在していた。サブカルチャー(軽音楽)の多様化が始まった頃である。

ハンコックの「ヘッドハンターズ」は、クロスオーバーミュージックの中では異色であった。クロスオーバーは、ロックとジャズの融合とされていて、チック・コリアのエレクトリックは確かにクロスオーバーだなと分かりやすかったが、ハンコックもマイルスの後を追うように、電化に走ったものの、単なる電化ではなかった。この頃から、黒人達は自信を持ち、白人の後を追うのではなく、自分の音楽を追究するようになったと思う。

カメレオンに針を落とす。「迷信」と同じようなリズムをキーボードで刻んでいるが、ハービー・メイソンのスネアのタイミングが、16ビートで、裏に入っている。ハンコックはフェンダーローズ、ムーグシンセサイザー、クラビネットと何種類ものキーボードを使い分け、まさにカメレオン、変幻自在。次のウォーターメロンマンは60年代にハンコックが4ビートジャズとして演奏していた曲の再演だが、全く別物。イントロはアフリカを意識したもの、それから続く重いリズムがたまらなく良い。ギターで刻んでいるように聞こえるリズムはシンセ。B面の一曲目は「スライ」。やはりそうだよな一目置かれてたのが嬉しい。当時どん底だった、スライを元気づけようとしたのだろう。この複雑なリズムは、8を倍に刻んで16にしただけではなく、黒人達が自覚的に作り出し発展させたものだろう。ジェームス・ブラウンとスライ&ファミリーストーンの功績である。

日本の音楽夜話 2 ノイズ 大友良英 坂本龍一

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大友良英と坂本龍一のつながりは、プロジェクト福島だけでなく、noiseにもあった。このアルバムは坂本さんの2009年の近作であるが、前回紹介したONJOに近似したものを感じるし、大友さんと同じく、長い間音楽を追求してきた人の到達点のようにも思えるものだ。

9月に多治見で開かれた大友さんと僕の対談サブタイトルは「ノイズの向こうまで」だったが、noiseの向こうって何?という話には持って行けなかった。僕の技量不足。

大友さんのノイズの定義は「あなたが必要とする情報をさえぎる要素、あるいはあなたが必要としない情報のこと」。つまり、例え素晴らしい音楽が流れていても、聞きたい人の声の邪魔をしていたら、それもnoiseになるということである。大友さんは「集中して聴くことで聞こえる音と、逆に集中することで聞こえなくなる音がある」とも言っている。これを読んだ時、利休とジョン・ケージを瞬時に思った。狭い茶室の中で煮えたぎる釜の音を聴いている。水指の水を柄杓で汲んで釜に差すと一瞬釜の音が止む。その瞬間、急に茶室を取り巻く様々な生活音が聞こえてくる。釜の音がノイズだったのか、それとも生活音がノイズだったのか。ジョン・ケージは4分33秒という音楽でそれを表現した。ピアニストがステージの脇から出てきて、ピアノの前に座る。ピアノの蓋を開け、何もせず、4分33秒した後、蓋を閉めて脇に去ったという曲だ。ぼくはこの曲を聴いた時、茶室の釜に水と同じ体験をした。

「Out Of noise」良いタイトル付けるなあ。これって「ノイズの向こうまで」と同じじゃないか?

大友さんも坂本さんも、これから音楽とノイズの境界を彷徨っていくのだろう。

日本の音楽夜話 1 大友良英

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今年の9月、多治見で大友良英さんと対談。「あまちゃん」の劇伴で、一般的にも有名になられたが、元々実力のあるミュージシャンである。 対談にあたり、大友さんについて勉強した。この音楽家の今までの歩みと表現力の真摯さに胸を打った。ジャンルの特定はもちろんのこと、言葉で説明することがとても難しいミュージシャンである。ただ一つ言えることは、ずっと音楽が好きであり、正直に自分を時代と共に表現してきた音楽家であるといういうこと。対談相手にはいつも「西洋コンプレックスある?」と尋ねるが、今回は同世代として「団塊の世代が強くて我々は表に出られなかったけど、団塊の世代どう思う?」と尋ねてみた。その応えはここでは書けないが、分かる分かるというものだった。1950年代生まれの役割を認識する楽しい一時であった。

あまりにも大友さんが出している音源が多いので、これ一枚は難しい。僕の周りには女性を中心にグランドゼロ時代の大友さんのファンが多いが、僕は深みを増した21世紀の大友さんを推したい。「Otomo Yoshihide New Jazz Orchestra – ONJO」。音楽としての完成度が高い。真面目な大友さんが表れている書籍もお薦め。岩波から出版されている「 MUSICS」は、カテゴリーを越えた表現の世界、様々な示唆に富んでいる。

10月には多治見で新体制ONJOのライブをして頂き、ながせ商店街では、プロジェクト福島の盆取りをしてもらった。ONJOの生演奏で盆踊り。最高に盛り上がって終わった。福島の応援、何らかの形で続けていきたい。

脱ガラパゴス化 2

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ロスアンジェルス編2

LACMAという近代美術館には、パリのポンピドゥセンターと同じように、現代美術の横にプロダクト製品が展示してあった。欧米でプロダクトデザインの地位がどんどん上がっていることが分かる。白眉はガラスのコンテナーである。日常雑貨に光が当てられて嬉しい気分になった。これから20世紀がどのように評価されていくか楽しみである。日本も頑張っていね。

脱ガラパゴス化 1

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4ヶ月ぶりのブログ。怠けていたわけではありません。怒濤の、いや充実の4ヶ月でした。

結婚式4つに出席。出産の話も沢山聞いたから、今年は星の巡りのいいのかな。

9月初旬、ロスアンジェルスで彫刻の個展。30年ぶりのアメリカ。旧車愛好者として、沢山見掛けたのは嬉しかった。一番驚いたのは、近代都市のイメージがあったロスアンジェルスは木材をふんだんに使った街づくりだったこと。電信柱は木製。日本の物より、背が高くて太いのに木製一本柱。建物も木造が多かった。靴の写っている写真はサンタモニカの桟橋。100年前の木製床を未だに使用している。雨が余り降らないからか、露天なのにまだ耐久性あり。

今年は島国日本に住み、脳内がガラバゴス化していることを実感した。ちょいと脳を刺激するため、脱ガラパゴス化を図りたい。

これも早めの老化対策か。

 

FUNKの周辺 5  コンセプトアルバム

1964年3月グレン・グールド、1966年8月ザ・ビートルズ、その日を最後に両者ともライブ活動を止めてしまった。反体制のサブ・カルチャーが力を持ったと同時に商業的にも利用されるようになってきた。ライブの長所・短所のうち、短所が目立つようになった時期でもあったのだろう。両者とも、その後、スタジオ録音で素晴らしい作品を発表するようになる。コンセプトアルバムというのは、シングル曲の寄せ集めではなく、アルバムが一つの作品となるよう構成されているもので、ビートルズは67年に「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブバンド」という世界初(諸説ある)のコンセプトアルバムを出した。ダンス音楽であるファンクとコンセプトアルバム?違和感があると思う方は多いだろう。ジェームス・ブラウンがライブ盤を沢山出していることと比較して、スライ&ファミリーストーンはウッドストックは例外として一枚も出してない。スライはラジオDJ、プロデューサー、ソングライターから出発していることもあり、ライブより、スタジオ向きの性格だったのではないだろうか。スライの音作りは、音を積み重ねていくより、間を大事にしているので、凝った作りではないように聞こえてしまうが、当時としては革新的な音作りをしていたと思う。69年頃に発売された「スタンド!」は、黒人たちの差別撤廃運動、キング牧師の暗殺と重なり、象徴的なアルバムとなった。マイルス・デイビス、ジミ・ヘン、ミーターズ、ジャクソン5など70年頃に発表された曲に、スライのSING A SIMPLE SONGのフレーズが流用されている。スライは意識していたのか、していなかったのか、僕には「スタンド!」はコンセプトアルバムに思えるのである。

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FUNKの周辺 4 あのリズム

ファンク特有の一拍目を強くするあのリズムを最初に誰が始めたのか、答えは誰にも分からないだろう。多分、自然発生的なものであり、黒人達の遺伝子の中にあるものだと思う。ジェームス・ブラウンが始めたとされているが、50年代のファンキージャズにもその萌芽はあるし、断定するのは難しい。

一般的に65年春に録音されたJ.B.の「PAPA GOT A  BRAND NEW BAG」が、あのリズムの初出されている。しかし、64年の9月録音の「OUT OF SIGHT」は、ほぼ同じ曲調にリズムである。更に遡り、63年のバラード集「PRISONER OF LOVE」の「SIGNED,SEALED AND DELIVERED」でもあのリズムで演奏されている。63年から64年頃の演奏は、まだファンキージャズの流れのようで、インパクトが弱く、まだFUNKという固有名詞は与えられない印象だが、「PAPA ・・・」ではやはり完成されていて格好良い。社会的には完成された時点で認められるので、「PAPA・・・」が最初ということになるだろう。FUNKの特徴はあのリズムだけでなく、J.B.が作ったあの音楽的なスタイルということが言えるかもしれない。やはり、J.B.は偉大である。

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